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大手メーカー元部長、老後に転落
「飯はマズイし、職員の愛想は悪いし、最悪だ」
78歳の佐藤さん(仮名)。こちらの顔を見るなりこう吐き捨て、半年前に入居した老人ホームについて延々と愚痴り始めた。神奈川県の郊外に立地し、病院との連携や24時間看護師常駐を売りにした同施設は明るい雰囲気で、スタッフの挨拶も丁寧だった。しかし、佐藤さんは「料金の割に全然サービスがなっていない」と終始立腹した様子だった。
佐藤さんは誰もが知る世界的な大手メーカーで部長職を経験するなど、順風満帆のサラリーマン人生を歩んだ。娘と息子も育ち、退職後は夫婦で世界一周旅行を楽しむなど悠々自適の生活を送っていたが、妻の早逝を機に老人ホームに移住したことから転落が始まったという。
元同期が入居した高級老人ホームとの格差
「ちゃんとした老人ホームに比べたら、こんなところ、カスみたいなもんだ」
憤る佐藤さんに詳しく話を聴くと、こんな答えが返ってきた。佐藤さんの怒りの原因は、会社員時代の同期である高橋さん(仮名)が住む高級老人ホームとの格差だという。
佐藤さん曰く、高橋さんとは入社以来の友人で、家族ぐるみの付き合いだったという。しかし、サラリーマン人生の終盤、大きな差がついた。高橋さんは常務にまで上り詰めたが、佐藤さんは部長どまりで、最終的に子会社に転籍してサラリーマン人生を終えたのだ。
現役時代から鬱屈した気持ちを抱えていた佐藤さんだったが、決定打となったのが、かつてのライバルである高橋さんが入居しているのが有名な高級老人ホームだったと知ったことだ。引っ越しを告げる写真付きの年賀状には、高級感のあるタワー型の建物が写っていた。
調べてみると、都心の閑静な住宅街にあるその物件は入居一時金だけでも数千万円、それに加えて月額料金が30万円以上かかるという。夫婦で入居したというからそれぞれ2倍かかる計算だ。しかし、その施設は大浴場などの充実したハードに加え手厚いサービスで知られ、入居者に合ったリハビリプラン策定や、手の込んだ料理が特徴だ。
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