(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもの独立や定年を迎え、会社員人生の総決算として振り込まれる「退職金」。しかし、60歳からの5年間は、激減する収入に合わせて家計を絞り込まなければいけない期間です。それなのに、環境が変わったストレスから、なぜかお財布の紐を大解放してしまうと……? 誰もが陥りかねない「退職金ハイ」と「プライド崩壊」が招く、深刻な事態を見ていきましょう。

なぜ「収入激減」の時期に、お金を大解放してしまうのか

再雇用制度の普及、年金受給が始まる65歳までの生活資金の確保などの理由から、いまや60歳で退職する人は少数派です。総務省「労働力調査」を見ると、男性の場合、就業者の割合は60~64歳で84.4%に上り、65~69歳でも61.6%と半数以上が働いています。

 

同じ会社で継続雇用で働く人が多い中、なぜか退職金を短期間で溶かしてしまうケース――そこには「心の防衛本能」が関係しています。

 

まずは、会社での喪失感をお金で埋めようとすること。肩書を失う「役職定年」や「継続雇用(再雇用)」は、男性に想像以上に大きな精神的ダメージを与えます。その心の穴を埋め、プライドを保つために、人はお金を使ってしまうのです。

 

そして、「立場が変わっても、まだ現役」という錯覚です。完全にリタイアして無職になれば、誰でも恐怖から財布の紐を締めます。しかし、継続雇用で毎月給与明細をもらっているうちは、現役の延長線上にいるような錯覚が抜けきりません。それゆえ「減ったとはいえ、まだ収入はある」「少し足りない分は退職金から出せばいい」というドンブリ勘定になりがちなのです。

 

本来、60歳から65歳までの5年間は、人生において家計を絞り込む“リハーサル期間”です。激減する収入、残っている住宅ローン、退職翌年に押し寄せる重い税金や社会保険料。これらに対応するため、支出を厳しく抑えるべき時期です。

 

それが、退職金という「人生最大の貯金残高」を手にした高揚感と、職場でのストレス発散が重なることで、最悪のタイミングでの「大解放」を招いてしまうことがあるのです。

元・部長のプライドより守るべきもの

60歳以降の会社員生活で本当に守るべきなのは、「元・部長のプライド」ではなく、「65歳以降の自分たちのリアルな生活」です。通帳の1,500万円は、現役時代を走り抜いたご褒美(ボーナス)ではなく、これから先の長い人生を生き抜くための「最後の防衛資金」に他なりません。

 

60歳を迎えるタイミングで、これまでの現役時代の自分を一度綺麗にリセットできるか。会社の人間関係の「引き算」と同時に、家計の「引き算」をスタートできるか。その覚悟の有無が、65歳以降に訪れる「本当のリタイア生活」の明暗を分けるのです。

 

 

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