子どもが独立し、夫婦だけの暮らしが続く老後。そんな日々のなかで、ペットを「家族以上の存在」と感じるシニアは少なくありません。自分の食費や医療費は切り詰めても、“我が子”のためならお金を惜しまない――。愛情の裏側で、老後資金が減っていくシニア世帯の実情とは?

自分の医療費は削っても、“我が子”の贅沢は削れない

関東郊外の住宅街に暮らす恵子さん(仮名・69歳)は、同い年の夫と2人暮らしです。夫婦の年金額は月約22万円。住宅ローンは完済、子どもも巣立っているため、地方都市で暮らすには十分な額に見えます。しかし、実際には赤字転落の影がチラつく状況です。

 

「この子は、なにより大切な存在。もう我が子同然です」

 

恵子さんの言う“この子”とは、愛犬であるトイプードルの「チョコちゃん(仮名・8歳)」。恵子さんの生活はまさにチョコちゃんを中心に回っています。

 

高級ドッグフードやおやつ、サプリメントに、1ヵ月に1回のトリミング(1回8,500円)。トイレシートなどの消耗品に、専用の洋服。ペット保険の保険料は月あたり4,500円ほど。ペット関連だけで毎月4万〜5万円が飛んでいきます。

 

一方で、自身の昼食は見切り品の惣菜パンやカップラーメン。洋服も、たまにセール品を買う程度。風邪や体調不良でも滅多なことでは病院に行かず、「自分にはお金をかけない」と言い切ります。

 

総務省「家計調査(2025年)」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円。平均で毎月約4.2万円が不足する計算です。そのうえ、ペット費用の負担がかさめば、貯金を取り崩すことになるのも当然です。

 

実際、定年時に1,200万円ほどあった恵子さん夫婦の貯蓄は、すでに800万円を割り込もうとしています。

 

「『振り込まれた年金、もう使い切っちゃった』って言いながら、ついお金を貢いじゃう。もう、この子の“下僕”といっても過言じゃありません(笑)。ただ、夫の持病の薬代もあるし、いつまでこの生活を続けられるか……。でも、チョコにはできる限り長生きしてほしい。そう思うと、財布を開いてしまうんです」

 

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