冷蔵庫から消える食べ物、リビングを占拠する女性
まず、陽一さんの神経を削ったのが、共有キッチンの冷蔵庫でした。 ある夜、仕事終わりに楽しみにしていた缶ビールと、翌朝用のヨーグルトが消えていました。マジックで大きく『大和』と書いておいたにもかかわらずです。
数日後、また同様にヨーグルトが消えたことで、大和さんは管理会社に連絡。しかし、「名前を書いてもダメですか? 入居者に注意はしますが、誰がやったかまではわからないので……。心配なら、鍵付きの保冷ボックスを使う手もありますよ」
まさか、人を疑いながら生活をするのかと、陽一さんは何とも言えない虚しさに襲われました。
さらに、リビングを「オフィス化」している住人の存在。ノートPCを広げ、昼夜を問わず大声でオンライン会議や商談をするフリーランスの女性がいたのです。
「〇〇の件、どうなってる? メール待ってるから!」
そんな声が深夜までリビングから響きます。他の住人がやんわりと注意しても、「私、これで生計立ててるんで」とどこ吹く風。彼女が陣取っている時間帯、陽一さんを含め、他の住人は自室へ引きこもるしかありませんでした。
ゴミ出し・水回りルール無視の住人
そして、やはり掃除の問題です。ゴミ出しや浴室・リビングの掃除は、住人の当番制になっていました。ところが、当番表に名前があっても、平然と無視する人間が3〜4人いることが判明。誰かが限界を迎えて片づけるのを、彼らはただ待っているのです。
「見学時の綺麗さは、管理会社が事前に掃除しただけだったんだな……」
お風呂に入りたくても順番待ち。ようやく浴室に入ると、床がびしょ濡れのまま放置。髪の毛が排水溝に絡まっていても、そのままの人も。
「自分が細かい人間だとは、一度も思ったことなかったんですが……。これは無理だと思いました」
入居からわずか1ヵ月半。陽一さんは退去届を出しました。初期費用が安いからと飛びついたシェアハウスでしたが、入居時に約15万円を支払い、退去する際には違約金やクリーニング代などでさらに約12万円を支払い。27万円以上の貯金を失った計算です。
陽一さんは大きなスーツケースを引きずり、実家の門をくぐりました。
「あら、どうしたの?」
怪訝そうな顔をする母親に、陽一さんは素直にこういいました。
「母さん、ごめん。シェアハウス、無理だった。とりあえず今月分の生活費は入れるから、次の部屋が決まるまで、ここにいさせてほしい……」
お得だからと選んだシェアハウス生活が、わずか45日で幕を閉じた陽一さん。
「多少高くても、次はアパートを探します。共同生活できるのは家族だけだって気づいたから」

