「うちは資産家の家系だから」…親族が信じていた“5億円”
浩二さん(仮名・35歳)は、90歳で亡くなった祖母・文子さん(仮名)の相続手続きを進めることになりました。
文子さんは、都内近郊に古くから土地を持つ家の出身でした。夫を亡くした後も、自宅といくつかの不動産を所有しており、親族の間では昔から「かなりの資産がある」と言われていました。
「祖母はよく、“昔はこのあたり一帯がうちの土地だった”と話していました」
親族の中には、「全部で5億円くらいあるのでは」と口にする人もいました。浩二さん自身も、はっきり確認したことはないものの、相続ではかなりの財産が残るのだろうと考えていたといいます。
ところが祖母の死後、通帳や残高証明、不動産関係の資料を確認していくと、想像とは違う現実が見えてきました。
普通預金の残高は、思っていたほど多くありませんでした。定期預金もすでに解約されていたものがあり、不動産の一部は晩年に売却されていました。
「え、これだけなのか」
浩二さんは、思わず声を漏らしました。相続人として集まった兄弟や親族も、顔を見合わせたといいます。
もちろん、通帳に「なぜ減ったのか」が詳しく書かれているわけではありません。しかし、医療費の領収書、介護施設の利用料、不動産の修繕記録、税金の支払い明細をたどるうちに、少しずつ事情が分かってきました。
文子さんは80代後半から体調を崩し、有料老人ホームに入居していました。月々の利用料に加え、通院費や介護用品代、身の回りの費用もかかっていたのです。
国税庁『令和5年分 相続税の申告事績の概要』によると、令和5年分の相続税の申告書提出に係る被相続人数は15万5,740人、課税割合は9.9%でした。相続税の対象となる財産は、預貯金だけでなく、不動産や有価証券、債務、葬式費用などを含めて確認する必要があります。
「5億円あるはず」という話は、過去の土地評価や親族間の記憶が膨らんだものでもありました。
