(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親が一人で暮らしていると、子どもは常にどこかで不安を抱えています。転倒、急病、火の不始末、認知機能の低下。本人が「大丈夫」と言っていても、実際には小さな危うさが積み重なっていることがあります。その限界が、ある夜突然、家族の前に現れることもあります。

冷えた床、空の冷蔵庫…息子が知った“一人暮らしの限界”

落ち着いてから室内を見ると、そこには誠さんが知らなかった母の生活がありました。

 

冷蔵庫には、豆腐と漬物、数日前の総菜だけ。台所には洗っていない食器が少し残り、薬袋は食卓の上に散らばっていました。

 

「ちゃんと食べてるって言ってたじゃないか」

 

誠さんが言うと、敏子さんは目を伏せました。

 

「買い物に行くのが、少し面倒でね」

 

最寄りのスーパーまでは歩いて20分以上。最近は膝の痛みで外出が減り、食事も簡単に済ませる日が増えていたのです。

 

さらに、光熱費を気にして暖房を控えていたことも分かりました。

 

「電気代が高いから、少し我慢してたの」

 

その言葉に、誠さんは強いショックを受けました。母は息子に心配をかけまいと、生活の不便や不安を隠していつも「大丈夫」と言っていたのです。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしの人が増加しており、令和7年時点で65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。家族と離れて暮らす高齢者の生活を、どのように見守るかは多くの家庭に関わる課題です。

 

その後、誠さんは地域包括支援センターに相談しました。配食サービス、見守りサービス、訪問介護、手すりの設置、緊急通報装置。使える支援を一つずつ確認していきました。

 

敏子さんは最初、遠慮しました。

 

「そこまでしなくていいよ」

 

しかし誠さんは、静かに言いました。

 

「今夜みたいなことが、また起きたら困るんだ」

 

現在、敏子さんは週数回の配食サービスを利用し、訪問介護も受け始めています。誠さんも、毎晩短い電話をするだけでなく、電気代や食費の一部を負担する形に変えました。

 

高齢の親の一人暮らしは、「本人が望んでいるから」と見守るだけでは足りないことがあります。住み慣れた家で暮らす自由と、命を守るための支援。その両方をどう整えるかが問われます。

 

 

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