お手伝いによって、子どもの「自己肯定感」を育てる
皆さんの家庭では、毎日の食事の準備や後片付けなどを、子どもにお手伝いをさせていますか?
私のうちにはホームステイの外国人学生がやってきて滞在することがよくあります。わが家では、彼らにも家族の一員として、家事を積極的に手伝ってもらうようにしています。通常日本ではよその家に行った人はお客さま扱いになり、家事などを手伝うことはあまりありません。
しかし特に外国人の場合、家事の手伝いに慣れていて、「何もしなくていい」と言われると逆に居心地が悪くなるようです。ですから、食事の後片付けや皿洗いなどをどんどんやってもらうようにしています。
皿一枚洗うにもお国ぶりが表れ、文化の違いがわかりますし、また家事の間の相手のしぐさやとりとめのない会話から、その人の性格の一端を知ることもできます。
かつては日本の家庭でも、子どもたちにも家事の分担、役割というものが必ずありました。ある子は買い物に行き、ある子は洗い物をする。ある子は庭の掃除をし、雑巾がけをするというふうに、何かしらの役割を担っていたものです。そうした手伝いを通じて、子どもはさまざまなスキルを身に付けていったのです。
まず家事というのは、どんなことでも必ず段取りや手順というものがあります。たとえば皿洗いでは、どう洗えばきれいに汚れが落ちるか、洗った皿をどう重ねるか、皿を拭いて片付けるのはどこかなど、さまざまな要素があります。
庭掃除でも、最近はほうきや塵取りの使い方を知らない子も珍しくないそうですが、どこに落ち葉を掃き集め、塵取りをどう使ってとるかという手順があります。
その一つひとつの手順や段取りを考えながらやってみて、うまくいかないことは修正し、より効率よく上手にできるように工夫していく。そういう頭と手を鍛える格好のチャンスなのです。
また家事で子どもが自分の役割を果たすことは、「自分はできる」という自己肯定感を養います。
家事を手伝って「あなたは洗い物が上手ね」「庭がきれいになったね」と家族にほめられでもすれば、それだけで子どもは自分が家族に認められている、責任のある仕事をしているという誇りがもてます。
そしてその自己肯定感が、勉強や学校生活でうまくいかないことがあったときにも、簡単に投げ出したり腐ったりせずに、問題に立ち向かう力になるのです。
「お手伝い」を通じて興味や可能性を探ることも可能
子どもだけでなく親の側にもメリットはあります。家事を通じて子どもとコミュニケーションが図れますし、家庭での役割に取り組む姿から、勉強の出来不出来とはまた別のものさしで、子どもの興味や性質、可能性を探ることができます。
「漢字は覚えないけれど、とても丁寧に掃除をする」とか、「数学は苦手だけど、料理のような創造的なことが好きなんだ」というように、多面的な見方ができるようになるということです。
私は幼いうちから早期教育などにお金をかけるより、家で親と一緒に食事の準備をしたり、家事の手伝いをするほうが、よっぽど効果があると常々話しています。