「注意すればパワハラ、黙っていればまたミス…」〈49歳・管理職〉かつての先輩だった“年上部下”への指導で追い詰められた理由

「注意すればパワハラ、黙っていればまたミス…」〈49歳・管理職〉かつての先輩だった“年上部下”への指導で追い詰められた理由
(※写真はイメージです/PIXTA)

部下への指導では、業務上必要な注意と、相手を傷つける言動を分けて考える必要があります。そんな中、相手が年上だったり、職場経験が長かったりすると、管理職側が遠慮し、問題を曖昧にしてしまうこともあります。その結果、ミスが繰り返され、双方の不信感が深まるケースもあります。

「注意したいのに、注意できない」年下管理職の葛藤

達也さん(仮名・49歳)は、メーカーの営業管理部門で課長を務めています。部下は8人。そのうちの一人、58歳の隆夫さん(仮名)は、達也さんが入社した頃から働くベテラン社員でした。

 

若手時代には、取引先への対応や社内手続きを教えてもらったこともあります。現在は役職定年を経て一般社員となり、達也さんの部下として勤務していました。

 

「隆夫さんには、私のほうが教わってきましたから」

 

達也さんは周囲にそう話し、敬意を崩さないよう心がけていました。

 

ところが、社内システムが更新されてから、隆夫さんの入力ミスが増えていきました。商品の納期を誤って登録したり、古い様式の見積書を取引先へ送ったりすることが続いたのです。

 

「次から気をつけていただければ大丈夫です」

 

達也さんは当初、遠回しに伝えていました。しかし、隆夫さんは「昔はこんな複雑な操作じゃなかった」と不満を口にするだけで、手順を確認しようとはしませんでした。

 

ある日、入力ミスによって取引先への納品が遅れました。達也さんは隆夫さんを会議室へ呼びました。

 

「この項目は、送信前に確認してもらえますか。前にも同じミスがありました」

 

すると隆夫さんは表情を曇らせました。

 

「随分きつい言い方をするな。最近、私にばかり厳しくないか?」

 

その言葉に、達也さんは動揺しました。

 

「そんなつもりはありません。ただ、業務上の確認として……」

 

隆夫さんは「最近は何でもパワハラになるからな」と言い残し、会議室を出ていきました。

 

それ以降、達也さんは指導するたびに言葉を選び過ぎるようになりました。具体的なミスを指摘せず、「できれば確認をお願いします」と曖昧に伝える。その結果、同じ誤りが再び起こりました。

 

厚生労働省『令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査』では、過去3年間にパワーハラスメントに関する相談があったと回答した企業は64.2%でした。職場でハラスメントへの意識が高まる一方、適正な指導まで避けてしまえば、業務上の問題が放置されるおそれもあります。

 

「注意するとパワハラと言われる。黙っていれば、またミスが起きる」

 

達也さんは、管理職としてどう振る舞えばよいのかわからなくなっていました。

 

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