「今の収入では足りない」それでも応募をためらい出したワケ
智子さん(仮名・46歳)は、夫と高校生の長男、中学生の長女の4人で暮らしています。現在は近所のスーパーで週4日、1日5時間のパート勤務をしており、月の収入は9万円ほどです。
智子さんは大学卒業後、メーカーの営業事務として約8年間働きました。受発注管理や請求書の作成、取引先との電話対応を担当し、後輩の指導も任されていました。
しかし、長男の出産を機に退職。その後は育児と家事に専念し、子どもが小学校に上がってから短時間のパートを始めました。正社員を辞めてからは、すでに10年以上が経っています。
再就職を意識したきっかけは、子どもたちの教育費でした。長男は私立大学への進学を希望し、長女も塾に通い始めています。夫の給与は大きく増えておらず、住宅ローンもあと10年以上残っていました。
「今のパート代だけじゃ、大学の費用まで出せないよね」
家計簿を見ながら智子さんが言うと、夫は答えました。
「フルタイムに戻れるなら助かるけど、無理はしなくていいよ」
それでも智子さんには、「自分がもっと働かなければ」という焦りが残りました。
求人サイトで事務職を検索すると、正社員の募集はいくつも見つかりました。ただし、応募条件には「基本的なパソコン操作」「Excelを使用した実務経験」「事務経験者歓迎」と書かれています。
かつては仕事で毎日使っていたExcelも、今では簡単な入力しか自信がありません。以前の勤務先ではなかったオンライン会議やクラウド上での書類共有も、よくわかりませんでした。
「10年以上ブランクがある私を、雇ってくれる会社なんてあるのかな」
応募画面を開いては閉じることを繰り返しました。
内閣府『令和7年版男女共同参画白書』によると、令和6年の15~64歳女性の就業率は74.1%まで上昇しています。一方、女性の正規雇用比率は25~29歳の60.3%をピークに、年齢が上がるにつれて低下する「L字カーブ」を描いています。働く女性は増えていても、出産などを機に非正規雇用へ移り、その後も正規雇用に戻りにくい状況が残っているのです。
智子さんも、まさにその一人でした。正社員として積み上げてきた経験と現在のパート勤務が、自分の中でつながっていなかったのです。
意を決して応募した会社では、面接官からこう聞かれました。
「退職後の期間に、事務職に関するスキルをどのように維持してきましたか」
智子さんはうまく答えられませんでした。面接後、不採用のメールが届くと、「やはり無理だった」と求人を見ることさえやめてしまいました。
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