毎月赤字、貯金わずか150万円…生活費は「息子頼み」だった
実は、和夫さん夫婦はもともと金銭面に大きな不安を抱えていました。夫婦の貯金は2人あわせてわずか150万円ほどしかなかったのです。年金収入は月23万円程度ですが、光熱費や食費、車の維持費、医療費などが重なり、毎月の家計は慢性的な赤字状態でした。
そんななか、健太さんが戻ってきてくれたことで、生活は確実に楽になっていました。というのも、健太さんが家族カードを作り、「食費は自分が出すから」とほぼ全額を負担してくれるようになったのです。
おかげで、それまで納豆とみそ汁ばかりだった食卓にはときどきスーパーのお刺身が並び、ときには回転寿司をテイクアウトする日もあります。夫婦にとって、健太さんは生活を支えるなくてはならない存在になっていたのでした。
だからこそ、喧嘩が増えても「出ていけ」とはいえませんでした。むしろ、「出ていかれると困る」という気持ちのほうが大きいのが本音です。
息子が再び家を出ていき、露わになった「老後不安」
しかし、先に決断したのは健太さんのほうでした。その日もいつものように小言をいうと、健太さんはいいました。
「やっぱり俺、一人で暮らすわ。もう毎日喧嘩すんのも疲れた」
そう切り出した息子に対し、高橋さんは思わず声を荒らげます。
「いまのお前に一人暮らしなんて無理だ! 家事も全部母さんに任せて、これからどうするんだ」
息子を心配しているような言い方でしたが、本心は違いました。家計を支えてくれる存在を失いたくなかったのです。しかし、そんな思いは健太さんには届きません。健太さんは翌朝、荷物をまとめて出ていき、家には再び老夫婦二人だけが残されました。
「行かないでくれよ……。これからどうすれば……」夫婦は思わず涙を流して激しく泣いてしまいました。
質素な食卓、減っていく預金残高……。和夫さん夫婦は、先の見えない老後への不安に押しつぶされ、途方に暮れています。


