「話し相手がいない」…お金以上にこたえた“孤立”の重さ
家計の苦しさと並行して、恵子さんを追い詰めたのは、地域での孤立感でした。
「私は、人付き合いが苦手なほうではなかったんです。でも、移住先では知り合いが一人もいない。何日も誰とも話さない日が続くと、想像以上にこたえました」
近所には同年代の住民もいましたが、昔からのつながりが濃く、途中から入っていくには勇気がいったといいます。自治会の集まりにも一度だけ顔を出したものの、うまく話に入れず、その後は足が遠のきました。
「困ったときに“ちょっと聞ける人”がいないんです。電球が切れたとか、草刈りをどうするとか、そういう小さなことが全部ひとりで重くなる」
ある冬の日、恵子さんはめまいを感じて自宅で動けなくなりました。幸い大事には至りませんでしたが、自分で救急車を呼ぶか迷い、しばらく床に座り込んでいたといいます。消防庁の資料では、救急搬送人員のうち高齢者が大きな割合を占めています。高齢単身者にとって、体調急変時の不安は現実的な問題です。
「そのとき初めて、“ここでひとり暮らしを続けるのは危ないかもしれない”と思いました」
その後、恵子さんは地域包括支援センターに相談し、買い物支援や見守りサービスの情報を得ました。すぐに転居までは決めていないものの、今後は病院や商業施設に近いエリアへの再住み替えも視野に入れているといいます。
「家賃がなくなれば安心と思っていました。でも実際には、それだけでは暮らしは成り立たないんですね」
移住は、人生を立て直す選択肢にもなります。けれど、住居費だけを基準に決めると、別の負担が見えにくくなります。恵子さんが通帳を前に言葉を失ったのは、 “この先もひとりでやっていけるのか”という不安が、一気に現実味を帯びたからだったのかもしれません。
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