孫に囲まれる幸せのあとに残った、静かな疲れ
一人暮らしをする節子さん(仮名・76歳)は、近くに住む長男夫婦の子どもたちと過ごす時間を楽しみにしていました。
夫を亡くして8年。年金は月14万円ほどで、持ち家に一人で暮らしています。生活は質素ですが、家計に大きな不安があるわけではありません。
長男夫婦には、小学生の孫が二人います。週末になると、孫たちはよく節子さんの家に遊びに来ました。
「ばあば、来たよ」
その声が聞こえるだけで、節子さんはうれしくなったといいます。
朝から唐揚げを仕込み、果物を切り、お菓子も用意する。孫たちはリビングでゲームをしたり、宿題をしたり、時には庭で走り回ったりしました。
「にぎやかなのは、本当にありがたいことなんです」
節子さんはそう話します。しかし、孫たちが帰った後、部屋には強い静けさが戻ってきます。
使った食器、散らかった座布団、テーブルに残ったお菓子の袋。片づけを終えるころには、体も心もどっと疲れていました。
そして夜、ひとりでテレビをつけると、急に胸の奥が空っぽになるような感覚に襲われたといいます。
「あの子たちは悪くないの。でもね、帰ったあとがつらいの」
節子さんは、誰にも言えなかった本音をそう語りました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしの人の割合は令和7年時点で男性18.3%、女性25.4%と推計されています。高齢期には、家族とのつながりがあっても、日常的には一人で過ごす時間が長い人も少なくありません。
節子さんも、家族と断絶しているわけではありませんでした。だからこそ、自分が孤独を感じていることを認めにくかったのです。
「孫も来てくれるのに、寂しいなんて言ったら、ぜいたくみたいでしょう」
その遠慮が、さらに気持ちを閉じ込めていました。
