(※写真はイメージです/PIXTA)

親の離婚や老後の不安をきっかけに、成人した子どもが再び親との距離を見直す場面は珍しくありません。厚生労働省『人口動態統計』によると、2024年の離婚件数は18万5,904組。あわせて内閣府『令和7年版 高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあると示されており、老後の住まいや支え方は多くの家庭で現実的な課題になっています。

「娘なら受け止めてくれる」…同居を断れない空気

仕事から帰れば家に母がいる生活。生活費や家事分担、将来の介護の入り口にもなりかねない同居。それは一時避難ではなく、人生の組み替えに近いものでした。

 

「母は“しばらくの間だけ”と言っていました。でも、そう始まった同居がずるずる続く話を、周りでも見てきたんです」

 

内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数を占め、高齢期の家族関係や住まいのあり方は社会全体の課題になっています。高齢の親と成人した子の同居自体は珍しくありませんが、それが当事者双方の合意と準備なしに始まると、生活の負担や心理的摩擦が生じやすくなります。

 

奈々さんは悩んだ末、母にこう伝えました。

 

「すぐにうちで同居するのは無理。まずは一時的に住める場所を探して、生活の見通しを立てよう」

 

和美さんは最初、強く反発したそうです。

 

「親子なのに、そんなことを言うの?」

 

それでもここで曖昧に引き受ければ、後で互いにもっと苦しくなると感じていました。そこで、年金見込み額や財産分与の進捗を整理し、不動産会社に同行して、賃貸の候補を一緒に探しました。自治体の相談窓口や法テラスの情報も調べ、弁護士への相談も勧めたといいます。

 

数週間後、和美さんは小さな賃貸に入居する方向で動き始めました。離婚そのものの整理は続いていますが、少なくとも“娘の家にそのまま入る”という流れはいったん止まりました。

 

奈々さんはいまも、母を助けたい気持ちが消えたわけではないと話します。ただ、助けることと生活を丸ごと引き受けることは違うともいいます。

 

「母が苦しいときに支えたいのは本当です。でも、私の人生まで当然のように差し出すことが親孝行だとは思えませんでした」

 

親子だからこそ、線を引くのは難しいものです。けれど、その線が曖昧なまま始まる同居は、優しさではなく共倒れにつながることもあるのだと、奈々さんは話します。

 

 

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