「大丈夫」はあてにならない…独居高齢者の“夜間リスク”
「体が動かないの、今すぐ来て…」
電話が鳴ったのは、午前2時過ぎでした。会社員の卓さん(仮名・52歳)は、眠りかけていたところで携帯の着信音に目を覚ましました。
表示された名前は、母・圭子さん(仮名・81歳)。ただ事ではないと直感したといいます。
「声が明らかにおかしかったんです。普段は強気な人なのに、震えていて」
話を聞くと、ベッドから起き上がろうとした際に体に力が入らず、そのまま動けなくなっているとのことでした。
卓さんはすぐに車を出し、実家へ向かいました。到着したのは通話から約40分後。玄関の鍵は開いたままでした。
「入った瞬間、嫌な予感がしました」
居間の電気はついたまま。寝室に入ると、母は床に座り込むような形で動けなくなっていました。
「大丈夫? 救急車呼ぶよ」
そう声をかけると、圭子さんは首を横に振ったといいます。
「そこまでじゃないの。ただ、力が入らなくて…」
外傷は見当たりませんでした。ただ、明らかに様子がおかしかったといいます。すぐに医療機関へ連れて行き、検査の結果、大きな異常はなかったものの、脱水と軽い低血圧が重なった状態と診断されました。
「命に関わる状況ではなかったと聞いて、ほっとしました。でも同時に、“紙一重だったかもしれない”とも思いました」
その出来事をきっかけに、卓さんは母の生活を見直すことになります。
圭子さんの暮らしは問題なく見えていました。持ち家で年金は月14万円ほど。「一人でもやっていける」と本人も繰り返していたため、頻繁に介入することは控えていたといいます。
しかし、改めて生活の中身を確認すると、いくつかの違和感が浮かび上がりました。
冷蔵庫には食材がほとんどなく、水分も十分に取っていなかった形跡がありました。薬は処方されているものの、飲み忘れが散見されました。
「“できているつもり”と“実際にできているか”は違うんだと痛感しました」
