高齢の母の暮らしを支える“意外な収入”
「ずっと黙ってたんだけど、私、年金だけで暮らしてるわけじゃないのよ」
その言葉に、修さん(仮名・53歳)は一瞬、返す言葉を失ったといいます。切り出したのは、母の和子さん(仮名・78歳)でした。
和子さんは夫に先立たれたあと、一人で暮らしてきました。本人が口にしていた年金額は月7万円ほど。国民年金が中心で、決して余裕があるようには見えませんでした。古い服を大切に着て、外食もほとんどせず、近所のスーパーでも値引き品を選ぶ。修さんにとって母は、「節約して何とか暮らしている人」でした。
「月7万円じゃ絶対に足りないと思っていました。でも、母は“なんとかなるから大丈夫”としか言わないんです。何度か仕送りしようかとも言いましたが、いつも断られていました」
転機になったのは、春先の何気ない夕食の席でした。最近、家の外壁補修の話が出ていたこともあり、修さんは「そんなお金、母さんに出せるの?」と聞いたのです。すると和子さんは、少し間を置いて、冒頭の言葉を口にしました。
「実は、毎月32万円くらい入ってきてるの」
「え……何が?」
「家賃よ。お父さんが昔、残してくれたアパートの分」
修さんは、しばらく意味が分からなかったといいます。父が生前、小さな賃貸アパートを所有していたことは知っていました。ただ、古い建物で、もうたいした収入にはなっていないと思い込んでいたのです。
「母はずっと“年金が少ないから贅沢できない”みたいな言い方をしていたので、本当にびっくりしました。月32万円って、母の年金の何倍もあるじゃないかと」
和子さんによると、そのアパートは夫の死後に相続し、管理は地元の不動産会社に任せてきました。空室が出る時期もあるものの、ここ数年は比較的安定して入居者がついており、修繕費などを差し引く前の家賃収入は毎月おおむね32万円前後だったといいます。国税庁は、土地や建物の貸付けによる賃貸料収入を「不動産所得」として扱い、総収入金額から必要経費を差し引いて所得を計算すると案内しています。
