(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の資産は、医療費や介護費など将来の不確実性に備える重要な基盤です。一方で、家族への支援という形で少しずつ取り崩されていくケースも少なくありません。総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、高齢単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円に対し、消費支出は14万8,445円と、平均で約3万円の赤字です。もともと貯蓄の取り崩しを前提とした家計に、継続的な支援が加われば、資産の減少は想定以上に早まります。

「家族のため」…老後資金を揺るがす“善意の支出”

「孫のためなら、できることはしてあげたいと思っていました」

 

そう語るのは、節子さん(仮名・67歳)です。夫を亡くしてからは一人暮らし。年金は月15万円ほどで、貯金は約1,800万円ありました。

 

「贅沢をしなければ、何とかやっていけると思っていました」

 

転機となったのは、長男の子ども――つまり孫の進学でした。私立高校への進学が決まり、入学金や授業料、教材費などでまとまった費用が必要になったのです。

 

長男夫婦から直接頼まれたわけではありませんでした。ただ、会話の中で「思った以上にお金がかかる」という話を聞いたとき、節子さんは自然と口にしていました。

 

「少しなら出してあげようか」

 

最初は入学時の費用の一部、50万円でした。

 

「それで助かるなら、と思ったんです」

 

その後も、制服代や修学旅行費、塾代など、節子さんの支援は続きました。「今回だけ」「これが最後」と思いながらも、その都度「孫のためだから」と自分に言い聞かせていたといいます。

 

「合計でいくら出したのか、途中から分からなくなっていました」

 

気づけば、数年で300万円以上を支出していました。

 

一方で、節子さんの生活は大きく変わっていきました。外食を減らし、電気代を気にし、趣味も控えるようになりました。

 

「自分のためにお金を使うことに、少し罪悪感を感じるようになっていました」

 

問題が表面化したのは、孫の大学進学が決まったときでした。再びまとまった費用が必要になる中で、節子さんはこれまでと同じように支援を申し出ました。

 

「できる範囲で、また少し出そうと思ったんです」

 

すると長男の妻は、少し考える様子もなく、こう言ったといいます。

 

「じゃあ今回もお願いできますか。入学金と前期分で、まとまったお金が必要で」

 

その言い方に、節子さんは一瞬言葉を失いました。

 

「“お願い”というより、“もう決まっていること”のように聞こえたんです」

 

長男も特に驚いた様子はなく、「助かるよ」とだけ続けました。それまで積み重ねてきたやり取りが、すべて前提になっている――そんな感覚だったといいます。

 

「頼られているというより、“出してもらうもの”として扱われているように感じました」

 

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