(※写真はイメージです/PIXTA)

都市部の家賃高騰は、単なる家計の圧迫を超え、高齢者の住まいを奪う深刻な事態を招いています。家賃の値上げにより、引っ越しを迫られた独り身の75歳女性は、立て続けに入居拒否にあい、「高齢者というだけで、もう普通の生活には戻れないんです」と切実な声を上げています。「高齢者・独居」というだけで入居を拒まれる――。この「居住選別」の背景には、現在の賃貸市場が抱える問題がありました。誰もが直面し得る居住選別の実態と、支援の在り方を専門家とともに探ります。

健康で経済力のある高齢者が拒絶される理由

高齢者の居住支援を行う「高齢者住まい相談室こたつ」の松田朗室長は、現在の賃貸市場において「居住の選別」を加速させている現状を次のように指摘します。

 

「現在、特に都市部では家賃上昇が続いていますが、一方でリスクの低い現役世代の入居希望者が豊富にいる状態です。そのため、管理の手間やリスクが懸念される高齢者を、最初から受け入れないと判断されてしまっています」

 

貸主側が抱く懸念について「貸主が最も不安視するのは、孤独死が発生した際の対応、認知症の発症による近隣トラブル、万が一の際の残置物処理に要する費用負担などです」と相談員の吉田岳史さん。さらに入居拒否の真の要因は、社会的孤立にあると強調します。

 

「実は、介護保険などの公的サービスを利用している人のほうが、賃貸契約においては有利に働く側面があります。定期的にヘルパーやケアマネジャーが訪問するため、異変にすぐ気付けるからです」

 

一方、健康で経済力もあり、自立している高齢者ほど公的サービスとの接点がなく、「万一室内で倒れた際、誰にも気づかれないかもしれない」と指摘します。

 

健康で自立しているがゆえに「誰の助けもいらない」という状況が、賃貸市場では逆に「リスク」として評価されてしまうというのです。

 

「貸主にとって、この『誰の目も届かない状態』こそが、孤独死による事故物件化を招く最大の懸念点だと考えます」

孤立を防ぐセーフティネットの構築の必要性

では、高齢者が住まいを確保するために、具体的にどのような対策を取るべきなのでしょうか。松田さんは「まずは、自治体から指定を受けた『居住支援法人』などの専門機関に相談してほしい」と話します。こうした法人は、高齢者の入居をスムーズにするための「仕組み」を整える役割を担っているのです。

 

「一般的に居住支援法人では、貸主の不安を払拭するためのサービスを提供しています。たとえば、警備会社の見守りセンサーを導入して異常時に駆けつける体制を整えたり、身元保証法人と連携して、万一の際の事務手続きや家財の片付けを事前にパッケージ化したりといった内容です」

 

こうした具体的な備えがあることを、不動産会社や貸主に伝えることが重要だといいます。

 

「たとえ今は健康であっても、『万一の際の見守りや保証の仕組みが整っている』という客観的な事実を提示することは、入居審査を通過するための非常に有効な手段となります。一人で悩まず、まずはこうした支援の枠組みを頼ってください」

 

さらに松田さんは、住宅を生活の基盤として維持するための社会的な仕組みづくりについて、次のように締めくくりました。

 

「高齢者の入居拒否問題を個人の備えだけで解決するには限界があります。官民が連携して、年齢を理由に住まいを追われないための実効性のあるセーフティネットを構築していくことが、これからの多死社会における喫緊の課題です」


※この記事は、THE GOLD ONLINEと Yahoo!ニュースによる共同連携企画です

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