(※写真はイメージです/PIXTA)

持ち物を減らし、シンプルに暮らす――いわゆるミニマリスト的な生活は、合理性や自由の象徴として注目されています。固定費を抑え、身軽に生きることは一つの選択肢です。しかし、暮らしを削ぎ落とすことが、そのまま安心や満足につながるとは限りません。生活の余白を失ったとき、別のかたちの不安や孤独が浮かび上がることもあります。

「身軽に生きたい」ミニマリスト生活を続けていたが…

「何も持たない方が、身軽に生きられると思っていたんです」

 

そう話すのは、都内でひとり暮らしを続ける真由さん(仮名・50歳)です。事務職として働き、月収はおよそ20万円。贅沢な暮らしではありませんが、生活は回っていました。

 

数年前、真由さんは大がかりな“持ち物の整理”をしました。きっかけは、40代後半で経験した転職と失恋が重なったことでした。

 

「部屋に物が多く感じたんです。服も、本も、食器も、思い出の品も、全部が過去の不要なものに思えてしまって」

 

最初はクローゼットを整理するだけのつもりでした。けれど、一度捨て始めると止まらなくなったといいます。棚を減らし、食器は2セットだけ、布団もコンパクトなものに買い替え、来客用の椅子も処分しました。

 

「誰かが来ることなんてほとんどないし、必要ないと思ったんです」

 

家の中から物が消えていくにつれ、気持ちも整っていくような感覚がありました。掃除は楽になり、無駄遣いも減りました。外食も減り、洋服は定番だけ。サブスク契約も見直し、通信費や保険も削りました。

 

「ようやく、自分に必要なものだけで暮らせるようになった気がしていました」

 

実際、家計は以前より安定しました。総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、単身世帯の消費支出は月平均17.3万円ですが、真由さんの月の支出ははるかに少ない水準に抑えられていました。支出を減らすという意味では、確かに“成功”していたのです。

 

ただ50歳を迎え、その暮らしに少しずつ違和感を覚えるようになったといいます。

 

最初は、体調を崩した日のことでした。熱が出て、丸一日ベッドから起き上がれなかったとき、冷蔵庫には水とヨーグルトしか入っていませんでした。薬を買いに行く気力もなく、頼れる相手も思い浮かばなかったそうです。

 

さらに、年末年始や連休が近づくたびに、気持ちが沈むことも増えていきました。部屋は整っていて、静かで、片づいている。けれど、その静けさが“落ち着き”ではなく、“空っぽ”に感じられる日が増えてきたのです。

 

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