(※写真はイメージです/PIXTA)

大学進学にあたり奨学金を利用する人は珍しくありません。しかし返還が長期に及ぶこともあり、結婚や住宅取得など、人生の節目で家計への影響が意識されやすくなります。

問われたのは返済額より“家計の見通し”

その後、優奈さんは一人で返済計画を見直しました。毎月の返済額、現在の貯蓄、今後想定される住居費。感情の問題だけでなく、数字として自分の生活を整理してみようと思ったのです。

 

JASSOの令和6年度『奨学金の返還者に関する属性調査結果』では、延滞理由として「本人の低所得」が最も多く、返済は収入状況に大きく左右されることが示されています。

 

逆に言えば、安定した収入のもとで返済計画が立っていれば、直ちに生活が破綻するわけではありません。返還が難しい場合には、減額返還制度や返還期限猶予制度も設けられています。さらに第一種奨学金には所得連動返還方式があり、課税所得に応じて毎年返還月額が見直されます。

 

優奈さんは、勤務先での昇給見込みや、結婚後も共働きを続ける意向を含め、家計のシミュレーションを作りました。そして、健太さんにもこう伝えたといいます。

 

「奨学金があることは事実。でも、それを返しながらどう暮らしていくかは、一緒に考えられると思う」

 

健太さんも、ようやく腹をくくったようでした。

 

「親の不安は分かる。でも、返済額だけを見て結婚を決めるのは違うと思う。ちゃんと計画を見せて話そう」

 

再び設けられた話し合いの場で、優奈さんは自分の返済状況を隠さず説明し、貯蓄計画や家計分担の考え方も伝えました。最終的に、健太さんの両親はすぐに賛成したわけではなかったものの、「何も考えずに進もうとしているわけではない」と受け止めたといいます。

 

「正直、すごく悔しかったです。奨学金は頑張ってきた結果でもあるのに、借金という言葉だけで見られてしまう瞬間があったので」

 

それでも優奈さんは、こう続けました。

 

「でも、結婚ってきれいごとだけでは進められないんですよね。だからこそ感情ではなく、現実を一緒に見てくれる相手かどうかが大事なんだと思いました」

 

問題になるのは、奨学金そのものよりも、その負担をどう共有し、将来設計にどう織り込むかです。

 

優奈さんは今も返済を続けています。結婚の話も、完全に消えたわけではありません。

 

「結婚は難しいかもしれない、と言われた日は本当に苦しかったです。でも、自分のこれまでを否定されたくはない。そう思って、ちゃんと数字で向き合うことにしました」

 

人生の節目で問われるのは、借入の有無だけではありません。その現実を、二人でどう引き受けるのか——そこにこそ、結婚生活の土台があるのかもしれません。

 

 

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