ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
データで読み解く「日本経済」のリアル【エンタメ・スポーツ・事件編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)
データで読み解く「日本経済」のリアル【季節&気象・マインド・おもしろジンクス編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)
富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
オランダの所得税制
オランダに居住する個人の課税所得は、所得の形態別に3つのボックスに分類され、それぞれ個別に課税されます。各ボックスで生じた損失は他のボックスの所得と通算できません。1990年の税制改革により、所得税と社会保険料は統合されました。
ボックスⅠ:勤労所得・住宅所得
ボックスⅠでは、給与や自営業所得、主たる住宅に関する所得が対象となり、累進課税が適用されます。個人所得税と社会保険料の掛金は同一の算定基礎に基づき計算され、税務当局が一括して徴収します。
2025年の税率(所得税と社会保険料の合計)は以下の通りです。
・35.82%
・37.48%
・49.5%
社会保険料の特徴
社会保険料には老齢年金や遺族年金が含まれ、全額を被用者が負担します。これらは所得税とともに源泉徴収され、税務当局に納付されます。
一方、雇用主は障害労働者所得補償保険(WIA)、労働不能者給付(WAO)基本保険、産業基金、失業保険(WW)、健康保険などを負担します。
1988年には、税務当局の納税者番号を社会保障番号としても使用することで、所得税と社会保険料の一元管理を実現しました。
日本の所得税と社会保険料
日本では、所得税と社会保険料は別々に計算されます。社会保険料の算定方法は制度ごとに異なり、健康保険料は50段階、厚生年金保険料は32段階に等級区分されています。
計算の基礎となるのは「標準報酬月額」で、複数月の給与の平均額をもとに、等級として設定された金額を用います。
労使の負担
健康保険料・厚生年金保険料:労使折半(50%ずつ)
雇用保険料:事業種類により労使負担割合が異なる
労災保険料:全額事業主負担
オランダの給付付き税額控除
2001年の所得税改革により、人的控除を含む所得控除は税額控除へと転換されました。主な税額控除は以下の通りです。
基礎税額控除:すべての対象者(2025年は3,068ユーロ)
勤労税額控除:給与所得者および自営業者(2025年は5,595ユーロ)
児童税額控除:18歳未満の子を扶養する世帯(世帯総収入に制限あり)
複合税額控除:一定所得以下の被用者または自営業者で、12歳未満の子を扶養する者
控除額が所得税額を上回った場合、その超過分は社会保険料と相殺されますが、原則として現金給付は行われません。
日本の現状とオランダ型導入のポイント
(1) 給付付き税額控除の対象者
日本における給与所得者は約6,000万人、確定申告を行う者のうち給与所得者を除くと約300万人です。また、マイナンバーカードの保有率は令和7年5月末時点で約78%です。
対象者は次の三類型に分類できます。
①給与所得者で、年末調整等により税額控除の処理が可能な者
②確定申告を行う自営業者、不動産所得者、その他の所得者
③上記①②以外の低所得者、福祉三法等に基づく福祉手当受給者
厚生労働省の最新データ(2025年7月分)では、生活保護世帯は約165万世帯、65歳以上70歳未満の単身世帯における生活保護費は月額130,580円です。
(2) 社会保険料軽減税額控除のメリット
オランダ型の特徴は、一定額の税額控除を行い、所得税額が控除額に満たない場合、その差額を社会保険料から控除する点にあります。さらに、差額は現金給付とはなりません。この方式により、新たな給付執行機関を必要とせず、手続きの簡素化が期待できます。
ただし、社会保険料が軽減される結果として、課税所得の計算上、所得税額が増加する可能性があります。
(3) 社会保険料軽減税額控除のデメリット
①に該当する者は源泉徴収義務者が処理、②は確定申告で対応可能です。
問題となるのは③の層です。福祉手当の対象者以外の低所得者について、個人住民税の所得割が一定額以下の者を対象とするかなど、制度設計上の課題があります。
現金給付を行わない場合、③の対象者は社会保険料軽減税額控除の恩恵を十分に受けられない可能性があります。
まとめ
オランダ型の給付付き税額控除は、所得税と社会保険料の一元管理や手続きの簡素化といったメリットがあります。日本に導入する場合も、給与所得者や自営業者は比較的スムーズに適用可能ですが、低所得者層や福祉手当対象外の世帯にどのように恩恵を届けるかが大きな課題となります。今後の制度設計では、現金給付を伴わない利便性と、低所得者への公平な給付とのバランスが重要です。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
注目のセミナー情報
【海外不動産】3月5日(木)開催
日系大手参画プロジェクト
成長著しいフィリピン不動産投資セミナー
【税金】3月11日(水)開催
【ヒロ税理士が徹底解説】
高所得者の所得税対策
「自己資金ゼロ」で短期償却
~年間400万円以上の手取りUPも~
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
