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給付付き税額控除をめぐるこれまでの議論
給付付き税額控除の導入については、諸外国における同制度の検証や、日本への導入に関する提案など、さまざまな研究・提言がなされています。検討の対象となっているのは、制度の簡素化、低所得者救済の方法、現行諸制度との整合性などであり、いずれも税額控除および給付を実施する国の視点からの分析が中心となっています。
2010年前後にも給付付き税額控除が注目されたことがありましたが、その際と視点は大きく変わっていないように思われます。制度としての合理性や実務上の課題は繰り返し議論されてきましたが、受給者がどのように制度を受け止めるのかという観点は、十分に検討されてきたとは言い難い状況です。
2024年度の定額減税の概要と政策的意義
2024年度税制改正に伴い、2024年分の所得税について定額による特別控除(定額減税)が適用されました。これは1人あたり所得税3万円、住民税1万円の合計4万円を納税額から減額するというものでした。
この定額減税は、現在議論されている給付付き税額控除と実質的に同様の効果を持つ政策であったといえます。形式は税額控除であっても、最終的に国民の可処分所得を増加させるという点では「給付」と同質の性格を有していました。その意味で、定額減税は給付付き税額控除導入を考えるうえでの重要な先行事例と位置づけることができます。
世論調査が示した評価の低さ
2024年6月15日および16日に朝日新聞が実施した全国世論調査(電話調査)によると、「評価する」との回答は35%であったのに対し、「評価しない」は56%という結果でした。また、「複雑でわかりにくい」「減税額を明示させるのは押しつけがましい」といった批判も見られました。
形態はどうあれ、1人あたり4万円の給付効果を受けたにもかかわらず、素直に歓迎する雰囲気が広がらなかったことは注目すべき点です。「評価しない」と回答した人の中に、この事務を担当した企業の人員や地方自治体の担当者が含まれているかどうかは不明ですが、受給者側から「助かった」という実感の声が広がらなかった原因については、改めて分析する必要があると考えられます。
給与天引き方式と還付方式の心理的差異
給与所得者の場合、2024年6月1日以降、最初の給与または賞与の支払時に源泉徴収税額から定額減税額を控除し、控除しきれない場合には翌月以降の給与や賞与から順次控除する仕組みでした。
この方法であれば、理論上は定額控除分だけ手取りは増加します。しかし、現在は給与が銀行振込で支給されることが一般的であり、かつてのように現金支給であった時代と比べると、減税の実感が得にくい面があったと考えられます。税額が減少していても、それが「給付」として認識されにくい構造になっていた可能性があります。
一方、給与所得者以外で区役所等から給付を受けた者は、1度に4万円の還付を受けました。しかし、これも1回限りの支給であったため、時間の経過とともに印象が薄れてしまった可能性があります。
支給方法・支給回数と受領者の受け止め方
今後、給付付き税額控除を導入する場合、給付を行わずに社会保険料と相殺するという提案もあります。しかし、その場合、受領者は減税の効果を十分に実感できるのでしょうか。制度としては合理的であっても、心理的な満足度が伴わなければ、政策評価は必ずしも高まらない可能性があります。
また、同じ4万円であっても、1回で支給する場合と1万円を4回に分けて支給する場合とでは、実質的な金額は同じでも、受け取る側の心理的な受け止め方は異なると考えられます。分割支給の方が継続的な効果を実感しやすい可能性もあり、この点も制度設計上の重要な検討課題となります。
国民目線から考える給付付き税額控除の課題
給付付き税額控除の導入にあたっては、制度の簡素性や行政効率といった国や行政側の視点だけでなく、受領する国民が減税効果を実感できる仕組みであるかどうかという観点も踏まえる必要があります。
制度がいかに合理的であっても、国民がその効果を体感できなければ、政策に対する支持は広がりにくいと考えられます。2024年度の定額減税の経験は、そのことを示唆しているのではないでしょうか。
今後の給付付き税額控除の議論においては、制度設計の精緻化とともに、「国民が実感できる減税」とは何かという視点を組み込むことが重要です。政策の成功は、制度の整合性だけでなく、受け手の心理や体験にも左右されるという認識が、これまで以上に求められているといえます。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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