(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期になると、配偶者の死や体力低下をきっかけに、生活の支えを家族に求める人は少なくありません。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあり、2025年時点で男性18.3%、女性25.4%にのぼると推計されています。 ただし「家族がいる=頼れる」とは限りません。家族側にも仕事・育児・心身の限界があり、支援のバランスが崩れたとき、関係はあっけなく切れてしまうことがあります。

「もう頼らないでください」長男が突き放した決定的瞬間

決定的だったのは、ある口論の場面でした。松田さんは苛立ちから「来てくれないなら、もういい。相続だって考え直すぞ」と口にします。その瞬間、長男の表情がすっと冷えたといいます。

 

数日後、届いたメッセージが冒頭の言葉でした。

 

もう頼らないでください。

あなたの不安を全部背負うのは無理です。

お金があるのだから、それで生活を整えてください。

連絡は必要な用事だけにしてください。

 

松田さんは何度も電話をかけましたが、長男は出ませんでした。「家族なのに…」と呟きながら、松田さんは初めて、自分の頼り方が相手にどう映っていたのかを考え始めます。助けを求めているつもりが、相続や恩を盾にした圧力として伝わっていたのかもしれない、と。

 

その後、松田さんは地域包括支援センターに相談しました。見守りサービスや家事援助、配食など、家族以外に頼れる選択肢が想像以上にあることを知ります。資産がある松田さんにとって費用は大きな問題ではありませんでした。問題だったのは、家族関係における依存の構造だったのです。

 

資産があることは、必ずしも安心を意味しません。むしろ「お金があるのだから家族に頼らず整えてほしい」という期待を周囲に生むこともあります。松田さんのケースは、経済的余裕がある高齢者ほど、支援の境界線を誤ると関係が崩れやすい現実を示しています。

 

「資産があるのに、どうしてこうなったんだろうな…」

 

松田さんはそう言います。しかし問題は資産額ではなく、頼り方の形にありました。家族に頼るには頻度や範囲の合意が必要であり、金銭や相続をほのめかす言葉は関係を歪めます。外部サービスを併用しながら距離を保つ——そうした設計がなければ、「家族だから当然」という前提は簡単に崩れてしまうのです。

 

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