教育資金一括贈与特例の構造と見直し
教育資金一括贈与特例は2013年度税制改正により創設され、最大1,500万円(うち学校外教育費は500万円まで)を非課税とする制度として導入された。高齢世代が孫世代へ教育費を前倒しで移転することを想定した制度であり、実務上も一定の利用がなされてきた。
2019年度税制改正では死亡時課税の見直しが行われた。贈与者死亡時に未使用残額がある場合、その残額は原則として相続財産に加算されることとされた。ただし、受贈者が23歳未満である場合や、23歳以上であっても在学中または教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合など、一定の要件を満たすときは加算の対象外とされている。
この結果、本制度は完全に持ち戻しを排除する仕組みではなくなったものの、既に教育目的で支出された部分については相続財産に戻らない構造を維持していた。したがって、生前に教育費として支出された部分については、相続税の課税価格を実質的に圧縮する効果が残されていたといえる。
結婚・子育て資金特例の設計
一方、結婚・子育て資金特例は最大1,000万円(うち結婚関連費用は300万円まで)を非課税とする制度である。こちらも一括拠出型であるが、死亡時の取り扱いはより明確だ。
贈与者が死亡した場合、未使用残額は原則として相続財産に加算される仕組みとされており、教育資金特例のような年齢要件等による広範な除外規定は設けられていない。したがって、相続時点で最終的に課税ベースへ戻る構造が明確に確保されている。
このため、本制度は資産を恒久的に相続財産から切り離す機能が限定的であり、相続税の恒久的な圧縮策としての効果は相対的に大きいとはいえない。実質的な移転効果は、生前に実際に支出された部分にとどまる。
結果として利用件数は教育資金特例ほどには伸びなかったものの、少子化対策および若年層支援という政策目的との整合性は維持されてきた。また、未使用残額を相続財産に加算する設計が明確であることから、相続税回避的な制度との評価は相対的に受けにくい構造であった。この点も延長判断に一定の影響を与えたとみられる。
制度の運命を分けたもの
今回の改正は、単なる利用件数の多寡だけで説明できるものではない。分岐点となったのは、相続発生時に資産がどの範囲まで課税対象に戻るのかという制度設計の違いにあると考えられる。
ある税理士は次のように指摘する。
「相続時に資産を原則として課税ベースへ戻す制度か、それとも一定部分を相続財産から切り離し得る制度か。この差が、制度の存廃を分けたのではないか」
教育資金特例は、贈与者死亡時に未使用残額を持ち戻す仕組みを導入しつつも、すでに支出された教育費については相続財産に戻らない構造を維持していた。そのため、生前に課税価格を圧縮する効果を一定程度有していたと整理できる。
これに対し、結婚・子育て資金特例は未使用残額を原則として相続財産に加算する設計を採用しており、相続税の恒久的な圧縮効果は限定的である。最終的に相続税の課税ベースへ戻る範囲が広い点が、制度評価の差につながったといえる。
今後の世代間資産移転の方向性
教育資金特例の終了により、一括拠出型による相続財産の圧縮は後退する。他方で、2024年度改正により相続時精算課税制度には年110万円の基礎控除が創設され、当該部分は相続時の持ち戻し対象外とされた。これにより、段階的な資産移転手段としての活用余地は広がっている。
また、扶養義務者間で通常必要と認められる教育費や生活費をその都度支払う場合は、従来どおり贈与税の課税対象外である。一括贈与特例の終了は、教育支援そのものを否定するものではない。
世代間資産移転を巡る制度設計は、相続税との整合性をより重視する方向へと再編されつつある。税制の持続可能性と政策目的の両立を図るなかで、生前贈与はより透明で説明可能な枠組みへと収斂していくことが想定される。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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