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企業が返済できなくなったら、経営者個人に返済責任が…
経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の債務を連帯して保証する仕組み。企業が返済できなくなった場合には、経営者個人が返済責任を負うことになる。
金融機関にとっては貸倒れリスクを抑える手段である一方、経営者にとっては大きな負担となる。特に事業承継の場面では、経営権の移転が終わった後も旧経営者に保証が残り続けたり、後継者が新たな保証を求められたりすることで、承継そのものが停滞する要因となってきた。
全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証に関するガイドライン」では、一定の要件を満たす場合には経営者保証を求めないことや、保証機能の代替手法を検討することが示されている。しかし現実には、事業承継やM&Aの現場で保証をめぐる課題は依然として残されている。
事業承継を阻んできた「見えにくい壁」
事業承継の現場では、会社の所有権や経営権の移転がスムーズに進んでいるように見えても、その裏で金融機関との調整が大きな障壁となることがある。
旧経営者の保証が解除されないまま残るケースや、後継者に新たな個人保証が求められるケースは珍しくない。また、保証解除の可否について金融機関側から十分な説明がなされず、経営者側が納得できないまま議論が停滞することもある。
金融庁によれば、経営者や後継者が保証解除を求めても、金融機関との間で保証の必要性に関する認識が一致せず、十分な説明が得られないといったケースが少なくなかったという。
「説明の不足」と「判断基準の不透明さ」が重なり、M&Aや親族内承継が前に進まない要因となってきた。
経営者保証情報ネットワークの仕組み
今回創設された経営者保証情報ネットワークは、M&Aや事業承継の前後において、経営者・後継者・金融機関・信用保証協会の間で情報共有を行う仕組みだ。
その目的は、保証契約の必要性について関係者の認識のずれを減らし、対話を通じて相互理解を深めることにあるという。金融機関が一方的に判断するのではなく、「なぜ保証が必要なのか」「なぜ解除できないのか」を説明し合うことで、納得感のある合意形成を目指している。
対象となるのは全国の銀行、信用金庫、信用組合に加え、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関。利用できるのは現経営者だけではない。事業承継を予定している後継者候補や、承継後も保証が残っている旧経営者、新たに保証を負った後継者なども相談の対象となる。
また、金融機関や信用保証協会側からの相談も想定されており、一方的な苦情受付窓口ではなく、双方の認識を調整するための場として位置付けられている。
制度の限界――保証解除を約束するものではない
もっとも、この制度は万能ではないだろう。経営者保証情報ネットワークは、あくまで対話と情報共有を促す枠組みであり、紛争解決機関ではない。金融庁が個別案件に介入して保証解除を促したり、あっせんや仲介を行ったりすることはない。
そのため、相談を行ったからといって保証解除が実現するわけではなく、最終的な判断は各金融機関に委ねられる。
制度の本質は「解決」ではなく「可視化」にあるようだ。これまで見えにくかった保証契約の必要性や判断根拠を明らかにし、対話を促進することが主な役割となっている。
変わりつつある金融機関の対応
一方で、経営者保証をめぐる金融機関の姿勢には変化も見られる。
金融庁が公表しているデータによれば、2025年上期の新規融資に占める「経営者保証に依存しない融資」の割合は、主要銀行を中心に高まっている。三井住友銀行は74.0%、三菱UFJ銀行は67.9%、りそな銀行は66.3%となっている。
もっとも、地域金融機関まで含めると水準には大きな差がある。保証に依存しない融資が広がりつつあるとはいえ、依然として金融機関ごとの温度差は小さくない。
経営者保証問題の背景にある「3つの構造課題」
経営者保証をめぐる問題は、単なる融資慣行の見直しにとどまらない。後継者不足への対応や中小企業M&Aの活性化、さらには地域経済の維持とも深く関わるテーマとなっている。
まず挙げられるのが、後継者不足との関係だ。中小企業の後継者問題は、「子どもが継ぎたがらない」という単純な話ではない。会社の経営そのものには魅力を感じていても、多額の借入金に対する個人保証や自宅担保、個人資産へのリスクまで引き継ぐことに抵抗を感じるケースは少なくない。
人材不足や事業環境の変化によって経営の難易度が高まっている。そこへ個人保証まで加われば、後継者候補が承継をためらうのも無理はない。経営者保証は金融問題であると同時に、後継者不足の一因として指摘されている。
また、地方経済との関わりも見逃せない。地方では中小企業の廃業が雇用の喪失や地域経済の縮小につながるケースが多いという。事業そのものは継続可能であっても、保証負担の重さから後継者が現れず、結果として廃業に至る企業もあるからだ。人口減少が進む地域ほど、一社の廃業が地域社会へ与える影響は大きい。経営者保証の問題は、一企業の問題にとどまらず、地域経済の持続性にも関わる課題と言えるだろう。
さらに、事業承継後も旧経営者の保証だけが残るという問題もある。経営権は後継者に移っているにもかかわらず、旧経営者が保証責任を負い続けるケースだ。
これは言い換えれば、「責任はあるが権限はない」状態である。一般に不合理とされるこうした状況が、旧経営者の高齢化後も続けば、相続問題へ発展する可能性もある。こうしたケースは、事業承継後も旧経営者の保証だけが残る問題として以前から指摘されている。
問われているのは保証解除ではなく対話の質
今回の経営者保証情報ネットワークは、保証解除を直接実現する制度ではない。しかし、その意義は単なる相談窓口の設置にとどまらない。
経営者保証をめぐる問題の背景には、後継者不足、地方企業の廃業、承継後も続く保証責任といった複雑な課題が横たわっている。制度はそうした課題を一気に解決するものではないが、少なくとも関係者が対話し、認識のずれを埋めるための新たな土台にはなり得るだろう。
事業承継を円滑に進めるためには、「保証を外せるかどうか」だけではなく、「なぜ保証が必要なのか」「本当に保証がなければ融資できないのか」といった根本的な議論が欠かせないだろう。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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