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「家はあるのに施設へ」…親の急死後に起きる現実
親が突然亡くなったからといって、子どもがすぐに自宅でこれまで通り生活できるとは限らない。
たとえば、母子家庭で母親が急死した場合、頼れる親族がすぐには見つからず、児童相談所が一時保護を行うケースがある。そこで問題になるのが、「生活を支える大人」が法的に不在になることだ。
未成年者は単独で契約行為を行うことができず、銀行口座の手続きや不動産管理なども自由にはできない。親の死亡が金融機関に伝われば、預金口座が凍結され、家賃や光熱費の支払いが難しくなることもある。
さらに、持ち家が残されていたとしても、親族間で管理責任や今後の生活方針をめぐる調整が進まなければ、子どもがその家に住み続けられるとは限らない。「実家はあるのに施設で暮らす」という、一見すると矛盾した状況が生まれる可能性も否定できない。
児童相談所の役割とは
では実際に、親を亡くした子どもに対して、児童相談所はどのような支援を行うのだろうか。
◆まず行われる「一時保護」
親が急死した場合、児童相談所はまず「一時保護」という形で子どもの安全確保を行うことになる。通報を受けた職員が状況を確認し、引き取れる親族がいない、あるいは生活環境が整っていないと判断されれば、一時保護所や委託家庭などで保護が行われることになる。
一時保護は原則2ヵ月以内とされているが、必要に応じて延長される場合もある。その間は、食事や就学、医療など、子どもの生活支援が行われる。
◆里親や施設につながるケースも
一時保護の後は、子どもの生活環境をどう整えるかについて、継続的な支援が進められる。親族への引き渡しが可能な場合には、調整を経て家庭復帰が図られる。一方、引き取りが難しい場合には、里親への委託や児童養護施設への入所が検討されることになる。
近年は、できる限り家庭に近い環境で育てる「家庭養護」が重視されており、里親支援の強化も進められているという。
また、突然親を失った子どもは精神的なショックも大きいため、心理士などによる心理的ケアが行われるケースも少なくない。
児童相談所は、相続問題を解決する機関ではない
もっとも、児童相談所は相続手続きを直接行う機関ではない。
ただ、子どもに後見人が必要と判断された場合には、家庭裁判所への未成年後見人選任申立てを促したり、弁護士や司法書士などの専門家と連携したりすることがあるという。
また、親族間で引き取りや財産管理をめぐる調整が必要になった場合には、関係機関との橋渡し役を担うケースもある。
一方で、相続登記や遺産分割協議などの法的手続きについては、別途専門家への依頼が必要となる。
こども家庭庁によれば、2024年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は約22万3,000件に上り、過去最多水準が続いている。虐待対応の増加によって現場の負担は年々大きくなっており、こうした「親の急死による保護」ケースへの対応も重くのしかかっている。
また、一時保護所の定員不足も課題となっており、地域によっては保護が必要な子どもをすぐに受け入れられないケースもある。
児童相談所は重要な"つなぎ役"ではあるものの、相続問題を含め、すべてを解決できるわけではない点は理解したいところだ。
子どもだけでは相続できない…未成年者に立ちはだかる壁
相続は、本来であれば亡くなった人の財産を家族へ承継する制度だ。しかし、相続人が未成年の場合、実務上は多くの制約が存在する。
未成年者が相続手続きを進めるには、親権者や特別代理人などの関与が必要になるケースが少なくない。たとえば、残された親族と利益が対立する場合には、家庭裁判所で「特別代理人」を選任しなければならないこともあるだろう。
さらに、相続財産に借金が含まれている場合には、相続放棄を行うかどうかの判断も必要になる。
しかし、親の突然死という混乱のなかで、必要書類をそろえ、家庭裁判所への申立てを迅速に進めるのは容易ではない。相続手続きが長期化し、子どもの生活環境が不安定な状態のままとなるケースもあるからだ。
"法的な親代わり"となる「未成年後見人」
こうした場面で重要になるのが、「未成年後見制度」だ。
未成年後見人とは、親の死亡や親権喪失などによって親権者がいなくなった未成年者について、家庭裁判所が選任する"法的な保護者"のような存在だ。
役割は幅広く、日常生活の支援だけでなく、相続財産の管理や契約行為、進学手続き、施設入所契約などを担うケースもある。親の急死後、誰が子どもの財産を管理し、生活を支えるのか――その空白を埋める制度ともいえる。
一方で、この制度は一般にはあまり知られていない。高齢者の認知症対策として「成年後見制度」は広く知られるようになったが、「未成年後見制度」については耳にしたことがないという人も少なくないだろう。
実際には、親の急死後に初めて制度の存在を知り、慌てて家庭裁判所への申立てを進める家族もあるという。子どもに財産を残すことだけでなく、「その財産を誰が管理し、どう生活を支えるのか」まで考えておかなければ、残された子どもが不安定な状況に置かれる可能性もある。
「祖父母も高齢で引き取れない」…変わる家族のかたち
かつては、親が亡くなった場合、祖父母や親族が子どもを引き取ることが一般的だった。
しかし現在は、その前提自体が大きく揺らいでいる。背景にあるのは高齢化だ。祖父母自身が80代、90代というケースも珍しくなく、「自分たちも高齢で育てきれない」という理由から、引き取りを断念せざるを得ない家庭も増えている。
それに加えて、親族関係の希薄化も無視できないだろう。「長年疎遠だった」「相続トラブルを抱えていた」「再婚家庭で関係性が複雑になっている」など、さまざまな事情が絡み合い、親族間の調整が難航するケースも少なくない。
児童相談所は、虐待対応だけでなく、こうした"家庭崩壊後の受け皿"としての役割も担っている。だが、現場の負担は年々増しており、支援体制の強化が求められている。
空き家・預金凍結・親族対立…"資産"が逆に子どもを苦しめることも
「財産がある家庭のほうが安心」――そう考える人は多い。しかし現実には、資産が多いほど問題が複雑化するケースもある。
たとえば、不動産を複数所有している場合、管理責任が曖昧になりやすく、投資用不動産や共有名義の物件が含まれていれば、親族間の調整はさらに難しくなる。
また、相続税や借入金の問題が絡めば、「子どものため」と言いながら、実際には親族同士の資産争いに発展することもある。
その間、子どもの生活は後回しになりやすい。相続をめぐる対立が長引いた結果、実家が空き家状態となり、子ども自身は施設や別の居住先で生活を続けるケースもある。
「子どもに財産を残す」ことと、「子どもがその財産によって守られる」ことは、必ずしも同じではないと言えよう。
"親なき後"に備えるには何が必要か
こうした問題は、決して特殊な家庭だけの話ではない。事故や病気は、どの家庭にも起こりうるからだ。
だからこそ重要になるのが、「親なき後」を前提にした準備が必要となる。たとえば、遺言書の作成や生命保険の受取人設定、家族信託の活用、親族間での事前共有、未成年後見制度への備えなどは、子どもの生活を守るうえで有効な手段となりうるだろう。
相続対策というと、「節税」や「資産承継」が注目されがちだ。しかし本来の目的は、"残された家族が困らないようにすること"にある。児童相談所の現場で起きている問題は、その原点を社会に問いかけているのかもしれない。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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