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古い火災保険の落とし穴
「鈴木様のご契約では、水災は補償対象になりません」
鈴木さんが加入していたのは、両親が生前に加入していた火災保険を、名義変更だけしてそのまま継続したもの。毎年の更新時も面倒なので「いつも通りでいいです」と答え、電話一本で更新手続きを済ませ、内容を見直したことは一度もありませんでした。
市から災害見舞金が支給されましたが、金額はごくわずか。到底被害額にはおよびません。
「まだ住める」の油断が招いた800万円の出費
そして、さらに追い打ちをかけたのが家の老朽化です。これまで「まだ住めるから」と先延ばしにしてきた外壁や屋根のサビ、雨漏り箇所が、水害をきっかけに修繕を避けられない状態に。
工務店から出された見積もりをみて、鈴木さんは心が折れそうになりました。内装のリフォーム、家財の買い替え、そして外壁・屋根の改修。すべて合わせると、費用は約800万円。
鈴木さんの貯蓄は、定年後の10数年で生活費や税金の支払いで少しずつ減っており、すでに1,000万円程度まで減っていました。そこに800万円の出費です。残されたお金はわずか200万円。静かで安心していた老後の生活は、大きく変わってしまったのでした。
「持ち家=安心」という大きな誤解
「持ち家でローンがなければ住居費はほとんど掛からない」と考えている人は少なくありません。
しかし、持ち家には固定資産税や火災保険料といったランニングコストに加え、さらに、外壁・屋根・設備などの修繕費などもかかります。これらは「ライフサイクルコスト」と呼ばれ、築年数が経つほど負担は大きくなります。
また、自然災害のリスクは軽視されがちです。火災保険は契約内容によって水害などが対象外とされたり、共済等では自然災害に関しては一定の割合までしか払われなかったりといったケースもあります。もちろん、災害リスクが低い地域であれば、補償を絞る判断も合理的ですが、近年の気象災害は、過去の常識が通用しない想定外の連続です。
鈴木さんのように、浪費も贅沢もせずに暮らしていたとしても、災害一つで家計が破綻することもあります。「節約のために保険料を抑えたい」という気持ちは理解できますが、万が一自宅が損壊したとき、多額の修繕費が必要となっても、自分でしっかり備えておかねば誰かが助けてくれる、なんてことはないものです。ライフサイクルコストや自然災害への備えも、持ち家で暮らす際には重要なことといえるでしょう。
リスクを想像できないことが最大のリスク
総務省の「住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の世帯の持ち家率は約8割。多くの日本人が、持ち家で老後を迎えています。
だからこそ、現役のうちからシミュレーションをしておくことが重要です。単に日々の生活費と年金額を比べるだけでなく、「あと30年住むあいだに、家の修繕にいくらかかるか」「もし被災したら、いまの保険で生活を再建できるか」といった、リスクまで織り込んだ計画が必要です。
特に火災保険に関しては「古い家だし、そんなに価値もないから安いプランで」と考えてしまいがちですが、いざというときに役に立たなければ、支払ってきた保険料こそが無駄になります。
自然災害のリスクは日本中どこにいてもついてまわります。「うちは大丈夫」と思わず、一度立ち止まって保険証券やハザードマップを確認しましょう。それが、あなたの「静かな老後」を守るための第一歩になるはずです。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
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