葬式費用はどこまで相続税で控除できるのか――相続税で認められる支出・認められない支出の決定的違い【税理士が解説】

葬式費用はどこまで相続税で控除できるのか――相続税で認められる支出・認められない支出の決定的違い【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の計算では、被相続人の借金などを差し引く「債務控除」が認められています。そのなかに「葬式費用」が含まれることは広く知られていますが、どこまでの支出が控除の対象になるのかを正確に理解している人は多くありません。香典返しは控除できない一方で、会葬返礼品や通夜振る舞いは認められるなど、葬儀に関する支出は内容によって相続税上の扱いが大きく異なります。本記事では、相続税法や国税庁通達、さらに国税不服審判所の裁決事例を踏まえながら、「葬式費用」として債務控除できる支出とできない支出の境界線を、実務の流れに沿って整理していきます。

「香典返し」が葬式費用にあたらない理由

吉田課長「相続人は、香典を出した参列者に対し、後日香典返しをすることがありますよね。これは、『葬式費用』には含まれないんですか?」

 

そうですね。日本では、香典をいただいた方に対して返礼品を贈る慣習があります。この返礼品の購入費用が「香典返戻費用」です。前掲4.(1)にあるとおり、この香典返礼費用は葬式費用には含まれず、控除できません。

 

香典の受取人は相続人です。民法上、相続人は参列者から「香典」という名目で金品の贈与を受けたことになります。そのため、本来であれば「贈与税の課税対象になるのではないか」という問題が生じます。

 

吉田課長「香典は故人を悼む気持ちを表したものですよね。だったら、贈与税の対象外なのではないですか?」

 

この点について、国税庁は次のように示しています。

 

「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しない」(相続税法基本通達21の3-9)

 

つまり、香典は社交上の儀礼として社会通念上相当と認められるため、贈与税は課税されません。

 

吉田課長「相続人が受け取った香典に贈与税がかからないことと、香典返戻費用の扱いがどう関係するのですか?」

 

香典返戻費用とは、香典を受け取った相続人が香典を出した参列者に返す返礼品の購入費用のことです。これが葬式費用に含まれない理由は、香典収入に贈与税を課税しない取り扱いとのバランスを保つためです。

 

つまり、香典に贈与税をかけない代わりに、相続税では香典返戻費用を債務控除の対象から外している、という整理になります。

 

このように、通夜や告別式で一律に渡す「会葬返礼品」と、香典を出した方に後日返す「香典返し(香典返戻費用)」は目的が異なるため、相続税上の扱いも異なります。

 

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