「遺族年金があるはず」…年金事務所で知った現実
『令和6年 簡易生命表』によると、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.13年。「長い老後をどう生きるか」は、多くの人にとって避けて通れないテーマです。経済的な安定や家族との時間、趣味を楽しむ余裕——どれだけ準備をしていても、想定外の出来事が人生設計を大きく揺るがすことがあります。
田中雅子さん(仮名)は、夫の隆一さん(仮名)と長年、自営業を営んできました。
事業の中心は隆一さん、雅子さんは経理を担当する二人三脚。努力が実を結び、事業は順調に成長し、夫婦は60歳で引退しました。
自営業であったため、夫婦は厚生年金には加入しておらず、老後の基礎となるのは国民年金でした。その一方で、隆一さんは投資にも積極的で、株式などからの収入もあり、老後の生活は比較的安定していました。
引退後の二人は、体が元気なうちにと旅行を楽しみました。国内外を巡り、特にヨーロッパやアジアの街並みや文化、美食を味わう日々。子どもや孫との交流も大切にし、家族が集う時間が何よりの喜びでした。
しかし、隆一さんが88歳を迎えた頃、その穏やかな日常は突然終わりを迎えます。予期せぬ病により、隆一さんが急逝したのです。
深い悲しみの中でも、雅子さんはさまざまな手続きを進めなければなりませんでした。銀行口座の名義変更、保険の整理、そして遺族年金の確認です。
「国民年金に入っていたのだから、遺族年金があるはず」
そう思い、年金事務所を訪れた雅子さんは、思いがけない現実を知らされます。
国民年金の遺族基礎年金は、亡くなった人に生計を維持されていた「18歳未満の子を養育している配偶者」などが対象です。すでに子どもたちは独立しており、高齢の配偶者のみとなった雅子さんは、遺族基礎年金の受給対象外だったのです。
