(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進む日本では、「年金があれば老後は安心」と考える人も少なくありません。しかし、たとえ一定の年金収入があっても、一人暮らしの高齢者が病気や体力低下をきっかけに、生活が急速に立ち行かなくなるケースは珍しくないのが現実です。周囲が気づいたときには、すでに深刻な状況に陥っていることもあります。

「安泰な老後生活」を送っているはずだった父

内閣府『高齢社会白書(令和7年版)』によると、65歳以上の人がいる世帯は約2,695万世帯にのぼり、全世帯の49.5%を占めています。また、65歳以上の一人暮らし世帯も増加傾向にあり、2025年には男性の18.3%、女性の25.4%が単身で暮らしていると推計されています。

 

こうした数字が示す通り、「高齢の親が一人で暮らす」状況は、もはや珍しいものではありません。そして、どれほど元気そうに見えても、ある日突然、生活が立ち行かなくなるケースは少なくないのです。

 

田中誠さん(仮名)は、65歳で大手企業を定年退職。以降は年金月額23万円を受け取り、経済的な不安とは無縁の老後を送っていました。現役時代に受け取った退職金もあり、生活に困ることはない――本人も、周囲も、そう思っていました。

 

趣味は園芸と旅行。手入れの行き届いた庭には季節ごとに花が咲き、近所でも「きれいな庭」と評判だったといいます。友人との交流も多く、まさに“理想的な老後”に見えました。

 

そんな父を誇りに思っていた長男の信一さん(仮名)は、仕事が一段落したのを機に、半年ぶりに実家を訪れました。ところが、門をくぐった瞬間、違和感を覚えます。

 

庭は荒れ放題で、かつての花々は姿を消し、雑草が伸び放題。家の中も整理されておらず、テーブルには食べかけの食事が残されたままでした。

 

「何かおかしい…」

 

家中を探し、ようやく寝室で父を見つけた信一さんは、言葉を失います。痩せこけ、目に力のない父の姿は、以前の面影とはかけ離れていました。

 

誠さんは体調を崩し、通院が増えていました。年金収入はあるものの、医療費や介護サービスの自己負担が重なり、家計に余裕はなくなっていったといいます。

 

「節約しようと思って、必要なサービスを減らした。気づいたら、生活そのものが回らなくなっていた」

 

年金があっても、「想定外の出費」が続けば、独居高齢者の生活は一気に不安定になります。

 

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