「まさか、15年前に結んだ民事信託が、家族を救うとは思いませんでした」そう語るのは、県外で暮らす会社員の高橋さん(仮名・60代)です。久しぶりに実家へ帰ったとき、父は要介護状態に。さらに、自宅は評価1億円超あるのに預金はわずか300万円という現実に直面しました。年月が経ち、母が施設へ入り実家は空き家に……。そこで信託が真価を発揮し、売却から資産の組み替えまでをスムーズに実現します。備えが“そのとき”家族をどう支えたのか、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が実例で解説します。
母親が施設に入り、自宅が「空き家」になった
年月が経ち、いよいよ母親は1人暮らしが難しくなり、介護施設へ入所したのです。
そのため、両親が長年住んできた自宅は空き家になりました。高橋さんも妹も自分たちの家がありますので、実家に戻って住む選択肢はありません。
この状態で、民事信託契約をしていないとどうなるでしょうか。
・母親は認知症になって会話ができないということではありませんが、それでも母親の財産である実家の売却の意思決断はできないこともあり、それでは売却できないとなります。
・その後、認知症が進むと成年後見人をつける必要がある
・売却までに時間も費用もかかる
しかし、以前に民事信託契約をしているお陰で、売却などの手続きはすべて高橋さんが単独でできるのです。15年前の信託契約により、長男が迷わず売却を実行できたのです。
自宅売却と、驚くほどスムーズな換金
自宅は 1億1,500万円で売却。
・3,000万円特別控除を適用
・諸費用:392万1,000円
・譲渡税:1,164万1,000円
その結果、手元に残った金額は約9,943万円。
空き家だった自宅が、「母親の老後を支える現金」へと姿を変えました。
売って終わりにしない! 家賃が入る財産へ
ここでは終わりません。売ったままでは金融資産が財産となり、売却代金だけで考えても、相続税が755万円かかる計算になります。
そのため、当方では賃貸不動産に買い替えることをおすすめしています。売却代金の一部を使い、約3,500万円の区分マンションを2室購入
これにより、
・毎月約20万円の家賃収入
・財産評価の圧縮
・将来の相続税は、ほぼかからない水準に
空き家 → 現金 → 家賃が入る財産という「資産組み替え」が実現します。
15年前の準備が、老後破産を防いだ
もし、15年前に民事信託をしていなければ、
・空き家は売れず
・お金は動かせず
・介護費用に不安を抱え
・相続税だけが重くのしかかる
そんな未来もあり得ました。
民事信託は、「今すぐ役に立つ制度」ではありません。しかし、“必ず来るそのとき”に、家族を自由に動かす力になります。
相続対策とは、税金の話だけではなく、人生後半の財産の使い方を設計すること。この実例が、そのことを教えてくれているのではないでしょうか。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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