「このままで大丈夫だろうか」佐藤さんが抱えていた静かな不安
佐藤さん(60代・男性・仮名)は、都内の自宅マンションに暮らしながら、これまで堅実に資産を築いてきました。
大きなトラブルもなく、2人の子どもにも恵まれ、外から見れば落ち着いた生活そのものでした。
しかし、年月が重なるにつれ、夫婦関係は徐々に冷え込み、今では“家庭内別居”のような状態。同じ家にいても会話がほとんどなく、生活はそれぞれが完結している。そんな日々が続いていました。
そのため、佐藤さんの胸の内には、誰にも言えない苦い本音がありました。
「正直、妻には財産を渡したくない」
しかし、その本音を遺言書に書いてしまえば、死んだ後まで恨まれるのではないか。自分のいない世界で、子どもたちに八つ当たりをするのではないか。
そんな恐れが頭から離れなかったのです。
佐藤さんの本音とは、「財産を渡したくない。でも、恨まれたくない」というものでした。
矛盾したその気持ちは、誰にでも相談できるものではありませんでした。さらに佐藤さんには、故郷に駐車場を持っているという事情がありました。毎月、少額ながら安定した駐車料金が入ってきます。
佐藤さんはふと思いました。
「この駐車場を妻名義にすれば、“ありがとう”と感謝してもらえるのだろうか……?」
しかし、それが相続上どんな意味を持つのか、税金はどうなるのか、本当に得策なのか――。自分一人では判断できません。
そこで当方の元へ相談に来たというわけでした。
「自宅マンションの評価すら知らなかった」という事実
面談当日。佐藤さんは“何から話し始めればいいのか”という表情で席に座られました。
まずお伺いしたのは、相続対策の大前提となる資産の全体像です。
・自宅マンション
・故郷の駐車場
・預貯金
・年金や生活費
・子どもたちに残したいもの
・配偶者の生活の見通し
・夫婦関係
佐藤さんは、小さな声でこう言いました。
「実は……家庭内別居なんです。だから正直、妻には財産を渡したくない。でも……恨まれたくもないんです」
その言葉を発した瞬間、“ようやく誰かに本音を言えた”という安心感が表情ににじみました。
知らなかった「自宅マンションの相続評価」
話は次第に具体的な資産の方向へ。
相続におけるマンション評価は、
・登記簿に記載されている敷地権割合
・固定資産税評価額
この2つが重要です。
しかし佐藤さんは、
・書類の場所が分からない
・敷地権割合の意味を知らない
・固定資産税評価額が相続に使われることも初耳
という状態でした。
この状態で「妻に渡したくない」と考えるのは、例えるなら 地図なしで山に登るようなものです。
