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法改正を促した武富士事件
このように、当時の税法の下では、国外財産を巡る贈与について課税を行うことは極めて困難でした。こうした問題意識を背景として、平成12年度税制改正が行われました。
改正後は、贈与により国外にある財産を取得した個人で、その取得時に国内に住所を有していない者であっても、日本国籍を有し、かつ、その者または贈与者が贈与開始前5年以内に国内に住所を有していた場合には、贈与税の納税義務が生じることとされました。
すなわち、国外財産の贈与であっても、贈与者と受贈者のいずれかが「5年以内に日本に住所を有していれば」贈与税が課される仕組みに改められたのです。
その後、制度はさらに見直され、現在ではこの居住要件は「国外居住10年超」へと延長されています。
この結果、国外財産について贈与税が課されないケースは、①日本国籍を喪失している場合、または②贈与者・受贈者の双方が国外居住10年超である場合に、ほぼ限定されることになりました。
「国外財産」か「国内財産」かというもう一つの論点
なお、本件で贈与の対象となったオランダ法人の株式は、武富士の株式を大量に保有しており、経済的実態としては武富士株式そのものと評価する余地もあります。その意味では、「国外財産」ではなく「国内財産」と捉える考え方も理論上は成り立ち得ます。
しかし、当時の法制度においては、そのような実質課税を行うための明確な根拠は存在していませんでした。
最高裁が示した租税法律主義
武富士事件は、東京地裁では納税者勝訴、東京高裁では課税庁勝訴、そして最高裁では再び納税者勝訴という、異例の経過をたどりました。
最高裁は判決において、租税法律主義について次のように明確に述べています。
さらに最高裁は、
と述べ、苦渋の判断で納税者勝訴と結論づけました。
制度と判例が残した教訓
武富士事件は、「不公平に見える結果」であっても、法律に明記された根拠がなければ課税できないという、租税法律主義の原則を改めて示した事件です。同時に、その限界が明らかになったからこそ、贈与税制度は大きな転換を迎えました。
制度改正と判例が交差したこの事件は、現在の国際相続・国際贈与を考えるうえでも、なお重要な示唆を与え続けています。
八ツ尾 順一
大阪学院大学 教授
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