老後に差し掛かってから子どもが実家に戻ってくる、いわゆる「出戻り」は、一般的にネガティブに語られがちです。「老後資産が減る」「生活リズムが崩れる」「静かな余生が奪われる」――。そんな心配の声が真っ先に浮かぶ人も多いでしょう。確かに、経済的に自立していない子どもが戻ってくれば、家計への負担は避けられません。実際、親の年金に頼りきりになり、老後不安が一気に現実化するケースも少なくありません。しかし一方で、同居がプラスに働くケースも。ある家族の事例と共に、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が“出戻り=不幸”にならないポイントを解説します。
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食べて、テレビを観て、寝るだけの毎日です…年金月21万円・70代年金夫婦の〈静かな老後〉が一変した日。きっかけは「出戻り長女の孫連れ帰還」【FPが解説】
静かすぎる家…会話のない老後に訪れた「まさかの事態」
神奈川県郊外に暮らす田中恵美子さん(70歳・仮名)は、夫の正夫さん(72歳)と長年、二人きりの生活を続けてきました。二人の娘はすでに独立し、それぞれ家庭を持っています。
子育てが終わってからの生活は、静かで穏やか……。そう表現すれば聞こえはいいですが、恵美子さんにとっては少し違いました。
正夫さんは几帳面で、生活ルールに厳しいタイプ。食事の時間、物の置き場所、家の中の動線まで細かく気にします。悪い人ではないものの、必要最低限の会話しかなく、「楽しい老後」とは言えませんでした。
そんなとき、突然の出来事が起きます。長女の美咲さん(38歳・仮名)が離婚し、2歳の孫娘を連れて実家に戻ってきたのです。
お金を食いつぶす、静かな老後が騒がしくなる、世間体――。そんな「出戻り」のマイナスイメージからでしょう。娘と孫と暮らしているというと、周囲からは「大変ね」「せっかく老後なのに」「お気の毒」と同情されることも。ですが、恵美子さんは、こういいます。
「私も最初は本当に不安で、正直憂鬱でした。でも、現実は違ったんですよ」