(※写真はイメージです/PIXTA)

税金を滞納した者が財産を海外へ移すことで、国内での差し押さえを逃れる――こうした手口は、これまで世界各国で問題となってきました。各国は国境を越えた税の取り立てを可能にする「徴収共助」制度を整備してきましたが、日本では依然として制度の隙を突く例が後を絶ちません。特に、滞納者から財産を受け取った人に納税義務を負わせる「第2次納税義務」については、国外財産に及ばないという重大な課題があります。近年、この穴を利用した“海外逃避スキーム”が増えており、制度の見直しが急務になっています。

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国際協力を可能にした「徴収共助」が機能

国際条約では、税金を滞納した場合に差し押さえが可能なのは自国内に所在する財産に限られるという原則が採用されています。これは主権の問題であり、他国の領域内で強制執行することはできないためです。しかし、この原則は裏を返せば、滞納者が財産を海外へ移してしまえば、自国政府は手を出せない余地が生まれることを意味します。

 

この点を悪用して、滞納者が財産を海外銀行口座や外国不動産に移す行為は、昔から後を絶ちませんでした。国境をまたいだ資金移動が容易になった今日では、オンライン送金だけで数時間以内に財産が「国外財産」に化けてしまい、従来の徴収体制では追いきれなくなっています。

 

こうした問題を受け、OECD加盟国を中心に整備されてきたのが徴収共助制度(Tax Collection Assistance)です。日本も2013年に多国間条約を締結し、2020年代に入ってからは実際の運用が急速に進みました。

 

日本の滞納者が財産を韓国に移したケースでは、国税庁が韓国側へ正式に徴収共助を要請し、韓国の政府機関が現地の財産を差し押さえる形で滞納税を回収することに成功しました。この成功例は、国境を越えて税逃れを防ぐ国際協力の有効性を示したものです。

 

一方で、すべてのケースにこの仕組みが適用できるわけではありません。

第2次納税義務の「国内財産限定」という弱点

滞納者が財産を他人へ贈与し、自身の名義から財産を消し去ってしまった場合、国税当局は差し押さえ可能な資産がありません。そこで用意されているのが第2次納税義務です。滞納者から財産を受け取った受贈者に対し、滞納者に代わって納税させる仕組みです。

 

しかし、この制度には致命的な制限があります。

次ページ第2次納税義務が及ぶのは「国内財産」のみ
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