(※写真はイメージです/PIXTA)

百貨店や小売チェーンの破綻が相次ぐアメリカでは、経営再建やブランドの行方と並んで、見落とされがちな問題が浮上しています。それが、すでに発行されている商品券やギフトカードの扱いです。「手元にある限り安心」に思える商品券ですが、企業が破産申請を行った瞬間、その価値は法的にも実務的にも不安定なものへと変わります。商品券は本当に守られるのか、それとも、ある日突然ただの紙切れになってしまうのでしょうか。

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「早期使用」を勧める理由

アメリカでは近年、百貨店や小売業の破綻が相次いでおり、すでに発行されている商品券やギフトカードの扱いが改めて注目されています。

 

「商品券を保有していても直ちに問題はない」とする弁護士もいますが、アメリカの破産実務に詳しい専門家の多くは、破産申請後は可能であれば1ヵ月以内に使用することを勧めています。

 

その理由は、企業が破産申請を行うと、商品券やギフトカードを引き続き受け入れるためには、破産裁判所の許可が必要になるからです。受け入れを継続するかどうかは、もはや企業の判断だけで決められるものではなくなります。

毎年積み上がる「使われない商品券」の実態

あるマーケティング会社の調査によると、アメリカでは毎年20〜40億ドル(約2,000億〜4,000億円)分の商品券・ギフトカードが未使用のまま残っているとされています。

 

こうした背景から、破綻のニュースが報じられると、商品券を一斉に使おうとする動きが起こりやすくなります。

 

一方で、オンライン販売を行っていない小売業者も少なくありません。実店舗の閉鎖や縮小が進むなかで、商品券を使いたくても使えないというケースも発生しています。そもそもECに力を入れてこなかった企業では、その傾向がより顕著です。

破産企業にとっての商品券は「巨額の前受金」

破産申告書や業界資料などによれば、商品券・ギフトカードとして未使用の残高は、全体で約7兆円規模に上るとされています。これは企業側から見れば、商品を引き渡すことなく、すでに現金を受け取っている状態であり、極めて大きな金額です。

 

破産企業は、法的には商品券やギフトカードを必ずしも受け入れる義務はありません。それでも、顧客との関係やブランド価値を重視し、引き続き利用を認める企業も多く存在します。特に、ブランド名や商標などの知的財産権の売却を視野に入れている企業ほど、ブランド価値の維持を重視する傾向があります。

再建中の企業が商品券を「資産」と考える理由

過去に破産申請を行ったJC Penney、J.Crew、Neiman Marcusは、破産裁判所で事業再建手続きを進める間も、店舗およびオンラインで商品券・ギフトカードを受け入れると表明していました。

 

商品券は顧客をつなぎとめる重要な手段であり、その顧客が追加購入を行う可能性も高いため、再建中の企業にとっては将来のビジネスにつながる資産と位置づけられています。

 

もっとも、商品券やギフトカードは、何年も前にもらったまま忘れられていることも珍しくありません。もし破産企業が商品券の利用を停止した場合、保有者は破産裁判所に債権者として申請することができますが、その立場は無担保債権者となります。回収順位は最下位に近く、実際に返金される可能性は極めて低いのが現実です。

レストランでも広がる商品券リスク

アメリカでは、商品券・ギフトカードは百貨店や小売業だけでなく、レストランでも広く利用されています。特に個人経営や中小規模の飲食店では、突然の閉店によって、商品券が一切使えなくなるケースもあとを絶ちません。

 

こうした状況を踏まえると、商品券・ギフトカードは「保有しているだけでは安全とは言えない準金融的価値を持つもの」と言えます。使えるうちに、できるだけ早く利用しておくことが、最も現実的なリスク回避策だと言えるでしょう。

 

 

 

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表

 

 

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