(※写真はイメージです/PIXTA)

税金を滞納した者が財産を海外へ移すことで、国内での差し押さえを逃れる――こうした手口は、これまで世界各国で問題となってきました。各国は国境を越えた税の取り立てを可能にする「徴収共助」制度を整備してきましたが、日本では依然として制度の隙を突く例が後を絶ちません。特に、滞納者から財産を受け取った人に納税義務を負わせる「第2次納税義務」については、国外財産に及ばないという重大な課題があります。近年、この穴を利用した“海外逃避スキーム”が増えており、制度の見直しが急務になっています。

日本だけの問題ではないが、日本では特に深刻

欧米では第2次納税義務に相当する制度の適用範囲を広げたり、国外財産に対する徴収権拡大を進めたりしていますが、日本は議論が慎重で、制度改正も後れを取っています。

 

そのため、「海外に移せば助かる」という誤った期待が一部で広がりやすい環境
になっていることが問題です。

 

公平な納税という観点からも、経済合理性の観点からも、現行制度は見直しの必要があると言わざるを得ません。

国境を越える時代の「徴収制度」の再設計を

今後、海外財産に関する課税・徴収制度は、

・第2次納税義務の国外拡大

・徴収共助の対象範囲の明確化

・国際送金のリアルタイム監視の高度化
など、多面的な見直しが避けられません。

 

日本はまだ“後手”の印象が強いままです。滞納者だけが得をする歪んだ構造を残したままにすれば、健全な税負担の理念は崩れてしまいます。

 

海外への迅速な資産移転が当たり前になった時代だからこそ、徴収制度の国際接合性と国内制度の整備を同時に進めることが必要ではないでしょうか。

 

 

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表

 

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