第2次納税義務が及ぶのは「国内財産」のみ
たとえ受贈者が国内財産を受け取ったとしても、それを海外口座へ送金した瞬間、財産は国外へ転化されます。
この瞬間に、
・日本の国税当局は第2次納税義務を適用できない
・徴収共助の対象にもならない
という二重の壁が立ちはだかります。
制度上の想定外を突いたこの手口は、2020年代後半に入り増加傾向にあると指摘されています。
悪用される“夫婦名義スキーム”
特に近年目立つのは、
・滞納者が配偶者へ国内財産を贈与する
・その配偶者が財産を海外に移す
という極めてシンプルな手法です。
配偶者は税滞納者ではなく、形式上は通常の受贈者にすぎません。しかし財産を国外へ移してしまえば、第2次納税義務も徴収共助も及びません。
相続発生の直前、つまり死亡間近にこの行為が行われれば、相続税までも徴収不能になる恐れがあり、深刻な問題として国税内部でも注意喚起されています。
背景にある「スピードと透明性のギャップ」
2025年時点で問題が深刻化している理由には次の2点があります。
① 資金移動が高速化しすぎた
フィンテック口座・暗号資産・海外デジタルバンクなど、数分〜数時間で国境を越える資産移転が可能になりました。
② 税制度のアップデートが追いつかない
税法は議論から施行まで数年を要し、国際送金の技術革新スピードと比べて圧倒的に遅いままです。
この“スピード差”こそが、悪意ある滞納者が制度の隙を突ける最大の原因になっています。
