(※写真はイメージです/PIXTA)

あまり他人には話さないことでしょうが、幼少期からの価値観の相違、決定的な喧嘩や行き違いから、親子が絶縁状態になってしまうことは珍しいことではありません。しかし、その結末が「孤独死」という形での再会だったとしたら、残された子どもの胸には重い問いが残ります。遺品整理の現場で見つかった、不器用すぎる親の愛の痕跡。それは、生前には言葉を交わすことのなかった親子の、最後にしてすでに手遅れな唯一の和解のきっかけなのかもしれません。※過去の相談事例をもとに、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説します。事例は、プライバシーのため一部脚色して記事化したものです。

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長年にわたる親子の隔たり

Aさんはひとりっ子。幼少期から父親とは価値観が相違していました。父は「夫が外で働き、妻は家を守るべき」「子どもは親に従うべき」という封建的な考えの持ち主。Aさんはしぶしぶ親の敷いたレールの上を歩んできましたが、常に不満を抱きながら過ごしてきました。

 

大学進学まで親のいうとおりに進んできたAさんですが、就職活動で初めて反旗を翻します。父が勧める大手企業の事務職ではなく、中小企業の企画部に就職したのです。自分の進みたい道に猛反対する父。反対を押し切って就職したのをきっかけに、絶縁状態となります。

 

母は専業主婦で、典型的な「昭和の家を守る妻」でした。母が仲立ちをしようものなら、父は「でしゃばることをするな」と激怒します。就職を機にAさんが家を出てからは、「二度と顔を見せるな」と家の敷居をまたぐことすら許されませんでした。

 

Aさんが結婚するときも、父は結婚式に参加しませんでした。 一度こじれてしまった関係は、父の頑固な性格上、戻ることはありませんでした。ただ、母とは電話で連絡を取り合い、子どもの成長に合わせて写真を送ったり、レストランで待ち合わせて孫に会わせたりしてきました。

 

しかし、その母も70歳のときに膵臓がんを発症。気付いたときには手遅れで、入院後わずか2ヵ月で亡くなりました。家事を一切しなかった父がひとり残ることを心配しましたが、関係はすでに修復不可能なほど悪化していました。Aさんが母の葬儀の詳細を知ったのは、父からではなく、叔父からの連絡だったのです。

 

次ページ5年後、警察署から一本の電話が…

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