(※画像はイメージです/PIXTA)

S&P500の時価総額の約3割をITセクターが占める現在、市場は歴史的な「一極集中」の状態にあります。AIへの過度な期待が先行する中、2026年に投資家が警戒すべきは、その反動による調整リスクです。塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より、次なる成長テーマと、ポートフォリオを守るための分散戦略を分析します。

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再エネ、AI、ヘルスケア…2026年、成長期待が集まるテーマ

以下の背後には、国家政策、社会的需要、技術進化といった構造的ドライバーが存在します。とりわけ「気候変動」と「AI」は、人類の課題であると同時に資本が集中するテーマとして、最も注目されています。

 

脱炭素・再エネ:グリーンインフラ、EV、水素、カーボンクレジット市場。米国のIRA(インフレ抑制法)はクリーン投資を税制優遇で後押し。

AI・自動化・次世代計算:AI半導体、ロボティクス、量子計算、自己進化型アルゴリズム。

ヘルスケア・バイオ:個別化医療、AI創薬、長寿・再生医療。

サイバーセキュリティ・防衛:ゼロトラスト、宇宙防衛、重要インフラ保護。

製造業の国内回帰と産業政策:米国CHIPS法、EU Chips Act、日本の半導体支援など、政策主導のリショアリング。

「AIへの期待」がもたらす光と影

2025年、Google Deep MindのGeminiが国際数学オリンピック(IMO)の問題を公式採点方式で解答し、金メダル水準に到達したと公表されました。同年、AlphaGeometry2も過去問題で金メダリスト平均を超える成果を示しています。これはAIが人間トップ層の思考領域に迫りつつあることを示唆します。

 

こうしたAIの進化は金融市場にも直結します。AI関連企業に資本が集中する「メガテック一極集中リスク」や、産業再編に伴う所得格差の拡大、新たなインフレ圧力の芽生えなど、従来にない課題が生まれています。

 

現在の株式市場でも、いわゆる「マグニフィセント7」と呼ばれる一部の巨大テック企業に物色が集中しています。S&P500におけるITセクターの比率はすでに3割前後とITバブル期並みに達しており(図表)、指数全体の動向を一握りの銘柄が左右する構造となっています。

 

こうした状況は、成長期待の大きさを映す一方で、過度な期待が先行していないか、現実の業績や収益構造を冷静に点検する必要があることを示しています。

 

(出所)Bloombergより筆者作成
[図表]S&P500に占めるテクノロジー業種の割合推移 (出所)Bloombergより筆者作成

期待の“先走り”感も…投資家に求められる「慎重な楽観」

生成AIは、知的労働の生産性を段階的に底上げし、マクロでは成長率や利益率を押し上げ得る「本物の技術」だと考えられます。標準業務の自動化、開発・設計・分析のサイクル短縮、少人数での高付加価値化―いずれも経済状況の改善につながる方向です。

 

一方、市場でいま評価されているのは主に半導体・データセンターといった“土台(インフラ層)”であり、サービスや業務インフラへの本格的な波及はこれからでしょう。多くの分野で収益モデルや単価設定が未確定のまま期待が先行している側面も否めません。

 

歴史を振り返れば、ITや鉄道、電気通信の普及でも「期待が先行→調整→本格普及」という過程を辿りました。これから紹介するハイプサイクル(期待→幻滅→安定・普及)が示す通り、普及は調整と表裏一体です。

 

ゆえに投資姿勢は「慎重な楽観」が妥当でしょう。生成AIの潜在力は大きい――ただし時間軸と層の違い(いまはインフラ中心、サービス波及はこれから)を見極め、期待先行の局面では過度な一極集中を避ける。

 

基本方針どおり、「中心に据える」ことと「依存する」ことは別であり、テーマに魅力があっても分散とリバランスで偏りを抑える発想が重要です。

 

次ページ「新技術」普及までの定番ルート

※本連載は、塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より一部を抜粋し、再編集したものです。

資産運用の論点2026

資産運用の論点2026

塚本 憲弘

日経BP

生成AI銘柄、オルカン、金(ゴールド)……投資の時事テーマを1冊でカバー ・2025年の株式市場は大きく上昇と報道されていたが、このまま放置でいいのか? ・流行りに乗って生成AI関連ファンドに投資しているが、このまま…

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