(※画像はイメージです/PIXTA)

S&P500の時価総額の約3割をITセクターが占める現在、市場は歴史的な「一極集中」の状態にあります。AIへの過度な期待が先行する中、2026年に投資家が警戒すべきは、その反動による調整リスクです。塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より、次なる成長テーマと、ポートフォリオを守るための分散戦略を分析します。

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政策が市場を動かす時代、「補助金頼み」に要注意

近年は、政策が市場そのものを形づくる時代になっています。米国CHIPS法は半導体製造支援と研究投資拡充を、EU Chips Actは域内での生産能力拡大を、日本でも大型補助金による半導体誘致を進めています。クリーン分野ではIRAがクリーン電力や省エネ投資を幅広く支援しています。

 

ただし、政策依存モデルは制度変更に脆弱です。チェックすべきは「政策終了後も民需で自走できるか」。補助金頼みの企業は、制度変更ひとつで成長ストーリーが崩れかねません。

不確実性が高い「テーマ投資」はあくまでも補完的な位置づけに

テーマ投資は未来を先取りする強力な手段ですが、マクロ経済環境と無縁ではありません。

 

たとえばAIブーム期に金利が急騰すれば、グロース株や長期債は逆風に晒されます。成長=常に株高ではなく、割引率の変動がバリュエーションに大きく影響することを忘れてはなりません。

 

テーマ投資は魅力的ですが、ボラティリティと不確実性が高いため、ポートフォリオ全体では補完的なサテライトとして位置づけるのが適切です。

 

コア:目的達成に直結する安定配分

サテライト:将来の成長テーマを取り込み可能性を広げる

 

この区分けを行い、比率・見直し頻度・出口条件をあらかじめ定めることで、継続可能性が高まります。

 

まず区分けと比率を先に決めておきます。土台となるコアを80%程度(広く分散した株式・質の高い債券・実物ヘッジ)に、成長テーマはサテライトで20%程度にとどめる。単一テーマはサテライト枠の半分以内(=ポート全体で5〜10%目安)など、過度な集中を避けます。

 

次に見直し頻度をルール化します。四半期ごとに点検し、リバランス余地を探る。目標比率から相応に乖離した際は臨時のリバランス、と最初に決めておきます。出口条件も明文化します。

 

たとえば投資の際に決断した期待値・シナリオが未達なら段階的に縮小、前提条件が崩れたら即時に売却、成長鈍化×明らかな割高が重なったら元本分は回収など利益確定、最大ドローダウン30%に達し市場全体は崩れていない場合は半減――といった具合です。

 

要するに、区分け・比率・見直し・出口を先に決めて記録し、機械的に運用することで、ハイプの熱に流されず「慎重な楽観」を実行に移せます。

 

「これは便利」が投資のヒントに…投資家に欠かせない「生活者視点」

未来の投資テーマを見つける力は、必ずしも専門家の分析だけから生まれるものではありません。日常生活の中での変化への気づきがヒントになります。

 

スマホ決済、リモートワーク、生成AIの活用など、私たちは既に多くの新技術のユーザーです。実際に「これは便利だ」と感じたサービスを提供する企業に目を向けることは、投資リサーチの第一歩です。

 

こうして生活者としての実感と投資家としての視点が結びつくと、資産運用は単なる金融行為を超え、「未来との対話」へと進化していきます。

 

 

塚本 憲弘

執行役員

マネックス証券株式会社

 

 

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※本連載は、塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より一部を抜粋し、再編集したものです。

資産運用の論点2026

資産運用の論点2026

塚本 憲弘

日経BP

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