(※画像はイメージです/PIXTA)

S&P500の時価総額の約3割をITセクターが占める現在、市場は歴史的な「一極集中」の状態にあります。AIへの過度な期待が先行する中、2026年に投資家が警戒すべきは、その反動による調整リスクです。塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より、次なる成長テーマと、ポートフォリオを守るための分散戦略を分析します。

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期待には幻滅もつきもの…新技術普及までの「5段階」

新技術投資で役立つ概念のひとつが、米ガートナー社が毎年公表する「ハイプ・サイクル」です。これは、新技術が登場してから社会に普及するまでの典型的な道筋を、曲線で表したものです。ハイプ・サイクルは大きく5つの段階に分かれます。

 

(1)技術の黎明期:登場直後。話題になるが商業化は未定

(2)過度な期待のピーク:メディアや市場で過熱。投資資金が殺到

(3)幻滅期:実用化が進まず失望感が広がり、価格が調整

(4)啓蒙期:一部の実用事例が出始め、可能性が再評価

(5)安定期・普及期:社会に定着し、安定成長する段階

 

グラフにすると、最初に急上昇(期待)、次に急落(幻滅)、その後なだらかに上昇(普及)という山→谷→上り坂の曲線になります。

 

投資家が最も失敗しやすいのは 「期待のピーク」で飛びつくことです。話題性はあっても収益化が伴わず、その後の幻滅期で大きな損失を被る危険があります。

 

逆に注目すべきは 「幻滅期」です。市場の関心が薄れた時こそ、将来性を冷静に見極め、長期的な成長に備えて投資を仕込む好機となります。その際に評価すべきポイントは、

 

〇実装可能性(本当に使える段階か)

〇収益化までの時間軸(ビジネス化は何年先か)

〇規制や標準化の見通し(制度的障害はあるか)

 

これらを踏まえ、「いつ・どの段階で、どの程度の比率でポートフォリオに組み込むか」を設計することが重要です。

2025年末の生成AIは「ピーク近辺~幻滅期の入口」

いまの生成AIブームは「過度な期待のピークの肩〜幻滅期の入口」に位置しています。ガートナーの見立てでも、2023年に生成AIは「過度な期待のピーク」に達し、2024年にはそのピークを通過した(ただし熱狂は継続)と整理されています。

 

2025年版では“生成AI関連の個別技術が段階ごとにばらけて配置”される流れが示され、全体としてはピークから下り坂へ移行している――というのが大枠です。

 

ただしレイヤーで温度差があります。インフラ層(半導体・電力・データセンター/モデル運用)は、巨額投資と実装課題(電力・遅延・TCO/ROI・安全性)の検証段階に入り、ピーク後の現実化が進行しています。アプリ/業務プロセス層は、まだ収益モデルや単価の定着前で期待が先行しやすく、ピーク近辺〜入口にある領域も多いです。

 

歴史的にも新技術は「期待→幻滅→啓蒙→普及」を辿りがちで、普及の前に調整が挟まるのが定番です。現状の市場でもリターンの多くが半導体など“土台”に集中し、サービス/業務インフラへの広範な波及はこれからという非対称が続いています。

 

したがってスタンスは「慎重な楽観」――好機は大きいが、一極集中(単一テーマへの過度な賭け)は避ける、というのが要諦でしょう。

 

次ページ政策が市場を動かす時代に注意すべき「自走」の姿勢

※本連載は、塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より一部を抜粋し、再編集したものです。

資産運用の論点2026

資産運用の論点2026

塚本 憲弘

日経BP

生成AI銘柄、オルカン、金(ゴールド)……投資の時事テーマを1冊でカバー ・2025年の株式市場は大きく上昇と報道されていたが、このまま放置でいいのか? ・流行りに乗って生成AI関連ファンドに投資しているが、このまま…

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