(※画像はイメージです/PIXTA)

米中対立や長引くウクライナ情勢といった地政学リスクに加え、米国株のバブル懸念や欧州株の停滞など不安要素が重なり、2026年にかけても投資家心理は揺れやすい状況が続きそうです。日本国内でも政治基盤の不安定さや財政運営への懸念が残る一方で、日本株には他国と比べて相対的に有利な条件が整いつつあります。こうした波乱含みの環境下で、なぜ日本株が「投資家に選ばれる」といえるのか。塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より、その背景と具体的な要因をみていきましょう。

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“常識破りの局面”出現?…2026年、米国株は「バブル」本格化へ

2026年に米国株が本格的な「バブル局面」に入る可能性も想定しておく必要があります。図表1で示したCAPE(シラーPER)は確かに割高圏にありますが、過去最高水準(ITバブル期の44倍前後)と比べれば依然として下回っており、歴史的にはまだ「絶対的な頂点」には達していません。

 

(出所)イェール大学より筆者作成
[図表1]米国株CAPE(10年平均利益に基づくPER)の推移 (出所)イェール大学より筆者作成

 

しかも、市場が必ずしも過去最高水準で頭打ちとなる保証はなく、投資家心理や金融環境次第では、その水準を超えて一段と拡張していく可能性も否定できません。金融緩和が再開し割引率低下が株価の追い風となれば、CAPEがさらに押し上げられ、過去の常識を超える新たな局面が出現するシナリオも現実味を帯びてきます。

 

同時に、指数の集中度も高まり、S&P500では上位10銘柄だけで時価総額の約4割を占めるまでになっています。AI関連の収益期待を背景に資金が一極集中する構図は、上昇局面では市場全体を押し上げる一方で、反転局面では同時性の高い調整を引き起こすリスクを孕みます。

 

さらに、AIインフラへの巨額投資が世界的に加速しておりますが、こうした前提は需要の持続を前提にした投資であるため、想定より収益化が遅れる場合には、過剰投資や投資回収難が一気に表面化し、バブル崩壊の引き金となり得ます。

 

また、株式益利回り(E/P)と10年金利との差、いわゆる株式リスクプレミアム(ERP)が縮小しており、株式の相対的な妙味は低下しています(図表2)。

 

(出所)Bloombergより筆者作成
[図表2]株式リスクプレミアムの推移 (出所)Bloombergより筆者作成

 

これは「高バリュエーションを正当化する余地」が限られていることを示唆し、もし投資家が成長ストーリーの持続に疑念を抱いた場合には、株価調整のインパクトが増幅される可能性があります。

 

投資家は、「バブル的過熱」への備えを

このように、2026年相場は「期待から実力へ」という基調が正しさを保ちつつも、別シナリオとして「バブル的過熱」が加速する展開も排除できません。

 

投資家はCAPEや予想PERなどのバリュエーション指標、指数集中度、AI関連投資の需給バランス、株式リスクプレミアムの水準といった定点観測を行いながら、万一のバブル局面に備えたリスク管理を怠らないことが求められます。

 

長期投資家にとっては、こうしたリスクシナリオを頭に置くことで、資産配分の見直しやヘッジ戦略を適切に組み込むことが可能になるでしょう。こうした価格水準や需給のリスクに加え、2026年は米国の中間選挙年という政治イベントも市場変動の契機となり得ます。

 

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※本連載は、塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より一部を抜粋し、再編集したものです。

資産運用の論点2026

資産運用の論点2026

塚本 憲弘

日経BP

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