不動産と組み合わせれば安心、現金の場合は専用の口座の準備を
このように、相続対策において家族信託を用いるメリットは大きいといえますが、家族信託の入り口として考えるべきは、やはり不動産でしょう。
家族信託は不動産との相性が抜群です。日本の不動産は登記制度がしっかりしているため、登記簿を見れば誰が権利者であるか明らかです。しかも、誰でも簡単に調べることができます。
そして、この登記簿には「家族信託に入った不動産である」ことを登記することが可能です。一度その旨が登記されれば、売買の取引の際も、買主側も信託になっていることがわかるため、取引も安全に進めることができます。
金銭の財産については、信託した現金を管理する信託口口座(しんたくぐちこうざ)を作成する必要があります。これは、信託契約において、委託者から預かった金銭を受託者の個人財産と分けて管理するための専用口座です。
不動産と異なり、金銭には登記簿や第三者への公示の制度はありませんので、個別に口座を分け、管理を行うといった対応が必要になります。
ただし、信託口口座の開設ができるかどうかは銀行によってまちまちです。銀行によっては自社の信託商品を買った人しか信託口が作れないというところもあります。このあたりは家族信託の課題といえるでしょう。
口座に「信託口」と明記されたほうがトラブルになりにくいのはもちろんですが、あくまで分離管理ができることが重要であるため、委託者の特定の銀行口座を信託財産である金銭の管理用に使っている方も、実際には多いように思います。
認知症発症前の対策が必須、必要性を感じたら対応を急いで
家族信託は、不動産相続で起こりやすい資産の凍結であったり、相続をめぐる争いごとを防ぐのに非常に有用な制度です。とくに不動産は、登記と組み合わせることによって非常に実効性が高くなります。
ただし、不動産信託もやはり契約であるため、認知症を発症してからは作れないのが欠点であり、そこは遺言と同様です。
従って、この制度の利用が必要だと思う方は早めの対策をお勧めします。
*本件は個人情報保護のため、内容は一部改変を加えております。
近藤 崇
司法書士法人近藤事務所 代表司法書士
