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世界に自社を売り込めるグローバル人材が不足
さらに日本の中小企業の中ではグローバル化に成功したとされるGNTにおいても、グローバル人材の保有状況は芳しくなかった。たとえば2014年の未来工学研究所の調査では、「グローバル化対応の事業戦略の立案ができる人材」に関しては、「十分に確保している」が3.8%しかなく、「大いに不足している」「やや不足気味」が96.2%もあり、人材不足が顕著である。
「外国向けの戦略立案のためのノウハウが確立している」と回答した企業は、どの項目においても2割程度であり、約8割のGNTが、ノウハウが確立されていない手探りの状態で海外に進出していったことがわかる。
「海外に拠点を有しているか」という質問に対し、「販売拠点を有している」は78.5%、「製造拠点を有している」は55.9%もあり、中小企業の平均値からするとかなり高いことがわかる。
今後一層の充実を望む公的支援としては、「海外進出に対する支援」が挙げられていたが、残念ながら、現在もそれらが十分に行われている状況にあるとは言えない。
筆者は本課題の解決が、日本において隠れたチャンピオンを生み出す最大の要因であると捉え、2014年以降、ずっと地方自治体の産業振興策を注視してきたが、残念ながら、上記の企業ニーズに応える施策を開始した地方自治体はなかった。
日本のGNTが直面する入口と出口の2つの困難
実際、経産省が企業(約1万1500社)と、全国自治体(約1700市区町村)を対象に行った「企業ニーズと地方自治体の施策に関するアンケート調査」(2012年1〜2月)によれば、次のような結果が出ている。
• GNT育成に必要な「1.新製品開発に必要な技術的支援およびネットワーク形成、2.海外販路開拓、3.優秀な人材の供給源の整備」に対する支援策は、ほとんど実施されていない。
• 地方自治体が企業誘致の目玉としている補助金には、企業はほとんど関心がない。企業は補助金につられて立地し10年後に赤字になるより、当初は赤字でも10年後に黒字になる立地場所はどこかという観点で選んでいるためと思われる。
• 技術力が勝負の現在にあってもなお、日本の地方自治体による企業支援策は、昔からほとんど変わらず、時代とともに変化する企業ニーズに対応できていない。
GNT企業は技術力を重視し、他社と差別化し、付加価値の高い製品開発が最も重要と考えている。そして、GNT企業は自社の技術力だけでは不十分なので、外部(顧客、大学、研究機関)との共同開発も実施している。
GNT企業は「新製品開発」と「海外販路開拓」の2つの業務が最も困難と回答しているが、当該業務を遂行する上で、多くの関係者から支援を受けている。政府に対しても、「新製品開発」と「海外販路開拓」に対する支援を最も望んでいる。
だが、日本では、そうしたニーズに応えるような施策がほとんど実施されていない。ずっと旧来の補助金型の施策である。しかし、それらは、技術力が勝負の現在ではほとんど意味がない、と言える。
岩本 晃一
経済産業研究所 リサーチアソシエイト
元日本生産性本部 上席研究員
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