“ニッチ市場”でドイツに大敗…ものづくり大国・日本の中小企業で、“技術力”より”国際化”が「優先課題」である理由

“ニッチ市場”でドイツに大敗…ものづくり大国・日本の中小企業で、“技術力”より”国際化”が「優先課題」である理由
(※写真はイメージです/PIXTA)

知名度は低いものの、特定のニッチ市場で圧倒的な世界シェアを誇る中小企業を経済用語で「隠れたチャンピオン」という。日本と同じく、中小企業の割合が多い”ものづくり大国”・ドイツには、「隠れたチャンピオン」を生み出すさまざまな支援制度がある。 一方で、ニッチ分野において技術力に定評がある日本とは何が違うのか。本記事では、岩本晃一氏の著書『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(朝日新聞出版)より、ドイツ経済の強さの秘密であるニッチ市場の中小企業を検証する。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

世界に自社を売り込めるグローバル人材が不足 

さらに日本の中小企業の中ではグローバル化に成功したとされるGNTにおいても、グローバル人材の保有状況は芳しくなかった。たとえば2014年の未来工学研究所の調査では、「グローバル化対応の事業戦略の立案ができる人材」に関しては、「十分に確保している」が3.8%しかなく、「大いに不足している」「やや不足気味」が96.2%もあり、人材不足が顕著である。

「外国向けの戦略立案のためのノウハウが確立している」と回答した企業は、どの項目においても2割程度であり、約8割のGNTが、ノウハウが確立されていない手探りの状態で海外に進出していったことがわかる。

「海外に拠点を有しているか」という質問に対し、「販売拠点を有している」は78.5%、「製造拠点を有している」は55.9%もあり、中小企業の平均値からするとかなり高いことがわかる。

今後一層の充実を望む公的支援としては、「海外進出に対する支援」が挙げられていたが、残念ながら、現在もそれらが十分に行われている状況にあるとは言えない。

筆者は本課題の解決が、日本において隠れたチャンピオンを生み出す最大の要因であると捉え、2014年以降、ずっと地方自治体の産業振興策を注視してきたが、残念ながら、上記の企業ニーズに応える施策を開始した地方自治体はなかった。

日本のGNTが直面する入口と出口の2つの困難 

実際、経産省が企業(約1万1500社)と、全国自治体(約1700市区町村)を対象に行った「企業ニーズと地方自治体の施策に関するアンケート調査」(2012年1〜2月)によれば、次のような結果が出ている。
 

• GNT育成に必要な「1.新製品開発に必要な技術的支援およびネットワーク形成、2.海外販路開拓、3.優秀な人材の供給源の整備」に対する支援策は、ほとんど実施されていない。

• 地方自治体が企業誘致の目玉としている補助金には、企業はほとんど関心がない。企業は補助金につられて立地し10年後に赤字になるより、当初は赤字でも10年後に黒字になる立地場所はどこかという観点で選んでいるためと思われる。

• 技術力が勝負の現在にあってもなお、日本の地方自治体による企業支援策は、昔からほとんど変わらず、時代とともに変化する企業ニーズに対応できていない。 


GNT企業は技術力を重視し、他社と差別化し、付加価値の高い製品開発が最も重要と考えている。そして、GNT企業は自社の技術力だけでは不十分なので、外部(顧客、大学、研究機関)との共同開発も実施している。

GNT企業は「新製品開発」と「海外販路開拓」の2つの業務が最も困難と回答しているが、当該業務を遂行する上で、多くの関係者から支援を受けている。政府に対しても、「新製品開発」と「海外販路開拓」に対する支援を最も望んでいる。

だが、日本では、そうしたニーズに応えるような施策がほとんど実施されていない。ずっと旧来の補助金型の施策である。しかし、それらは、技術力が勝負の現在ではほとんど意味がない、と言える。


岩本 晃一
経済産業研究所 リサーチアソシエイト
元日本生産性本部 上席研究員

 

注目のセミナー情報

【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション

 

【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

※本連載は、岩本晃一氏の著書『高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、編集したものです。

高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人

高く売れるものだけ作るドイツ人、いいものを安く売ってしまう日本人

岩本 晃一

朝日新聞出版

ドイツに抜かれ、名目GDPが世界第4位に転落した日本。“ものづくりの国”という共通点のある日本とドイツは、約99%が中小企業であるのも同じだが、日本の製造業の生産性はドイツの3分の2。それはなぜか? ドイツの優れた中小…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録