「地面師に狙われやすい不動産」の特徴
司法書士等が実務に当たる際に「警戒レベルを上げるサイン」には、下記のようなものがあります。複数当てはまるほど危険度は上がります。これらは大阪の法人乗っ取り型でも複数該当しています。
①億単位の超高額の取引
→10億円規模なら要警戒
②権利証・登記識別情報の欠落/提示渋り
→ 事前提示を頑なに拒む場合は要警戒
③やけに急ぐ売主
→ 価格を下げても早期決済を迫るようなら要警戒
④登記簿の乙区(担保)がやけにキレイ
抵当権等が付いていない更地・テナントビル等は送金先が限定されず、資金の流れで正体を炙り出しにくい。慎重に確認を
⑤利用実態が希薄
更地、賃貸中のビル等で、所有者本人の生活・事業の痕跡が乏しい場合も慎重に確認を
⑥よく分からないコンサルや代理人が多数出入り
地面師はチームで動くため、脇役が不自然に多くなる。注意を
残念ながら、防衛策に決定打はない…「多層防御」が必須に
地面師対策は、一手で完封できる類いのものではありません。多面的なチェックの積み重ねを行うのが現実的だといえます。実務上、効果が高い順に挙げます。
①法人オーナー必須! 商業登記を定期監視
●月1回の登記事項確認
自社の登記情報をオンラインで確認し、代表者・取締役・本店の変動をチェック。登記中の有無も把握。費用は軽微で、早期発見の効果は大
●社内ルール化
総務・法務の定型業務に“登記監視”を組み込む。異常があれば、取引一時停止・法務局照会・警察に相談へ
②事前本人確認の“質”を上げる(個人・法人共通)
●ICチップ検証
マイナンバーカード・運転免許証は“見た目”ではなくNFCリーダーや専用アプリでICチップの真正を確認。
●権利証(登記識別情報)の事前点検
番号・体裁・交付時期と登記履歴の整合。過去の司法書士・公証役場の関与履歴も照会。
●売主しか知り得ない情報のヒアリング
固定資産税の納付実務、過去の修繕やテナント入替え履歴、司法書士・税理士など日頃の関与専門家の実名等、「会話でボロが出る」ことが多い。
③取引設計で“逃げ道”を塞ぐ
●決済条件の見直し
残代金の一部を登記完了確認後に支払う条項(例:5割を完了後)。資金繰りの都合で難しい場合は、司法書士預りや金融機関エスクロー相当の枠組みを検討(日本型エスクローは制度上の制約が多く、スキーム選定は要注意)。
●送金先の厳格化
抵当権抹消等の関係者(金融機関等)への同時実行送金を組み入れる。資金の流れで“正体”をチェックする意味がある。
④「現地」と「人」を見る
●現地確認・面談原則
更地・空ビルほど“素性”が見えません。本店・事業所・居住実態の確認、本人(または役員)との対面は省略しない。
●関与者の洗い出し
妙なコンサルや代理人が増える取引は、参加者の資格・委任関係を一人ずつ裏取りする。
⑤売買に慣れた司法書士等の専門家を入れる
売買案件の現場では、登記・本人確認・資金移動・書類真贋が交錯します。場数を踏んだ司法書士・弁護士・宅建士のチームで、チェックを重ねることが、最大の抑止力になります。
