年収1,000万円に到達したが…給与明細を思わず二度見
東京都内の大手企業に勤める高橋さん(仮名・43歳)。新卒入社から20年以上が経ち、昨年、念願だった課長職に昇進。ついに年収は1,000万円を超えました。
国税庁『民間給与実態統計調査(令和5年分)』によると、年収1,000万円超の給与所得者はわずか約5.5%。高橋さんは「上位層」と呼ばれる水準に達したことになります。
しかし、昇進後に受け取った給与明細を見て、高橋さんは思わず目を疑いました。
「これだけ働いても、手取りはこの程度か…と。思わず二度見しました。期待していたほど増えていなかったんです」
年収1,000万円と聞くと、経済的に余裕のある生活を想像しがちですが、実際の手取り額は約730万円前後とされています。その差を生むのが、税金と社会保険料の負担です。
まず、日本の所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が増えるほど税率が上がります。課税所得が900万円を超えると、所得税率は33%に。さらに住民税も一律10%課税されます。
加えて、厚生年金・健康保険・介護保険(40歳以上)などの社会保険料も上昇し、年収1,000万円クラスになると、年間で約130万円前後の負担が発生します。
こうした制度上の理由から、年収の3割近くが税金や社会保険料に消える計算です。
高橋さんは、妻と小学生の子ども2人の4人家族。住宅ローンも抱えており、日々の生活費や将来の教育費、老後資金のことまで考えると「余裕などない」と語ります。
「たしかに“年収1,000万円”という響きは華やかに聞こえるかもしれませんが、手取りで見ると決して贅沢はできません。保険料も上がり、子どもに習い事をさせるのも悩むレベルです」
