念願の注文住宅を購入、幸せいっぱいのはずが…
地方都市で暮らす35歳のAさんは、同じ年の夫と4歳になる息子との3人暮らし。夫は会社員、Aさんも時短勤務の正社員で、世帯年収は約900万円ほど。節約しながら旅行も外食もほどほど楽しめる、平均的といえる暮らしをしていました。
結婚してからずっと賃貸マンション生活。息子が発する「キャー!」という叫び声や足音に気を使う日々に、「2人目も考えたいし、戸建てに住みたい」という夢が膨らんでいました。
さらに、自分より後に結婚した友人たちが次々と家を買い始め、SNSでも「マイホーム投稿」が続々。Aさんの胸には「私たちも早く……」という焦りがありました。
一方の夫は持ち家にこだわりはありません。ですが、マイホームを強く主張するAさんに、「いいよ、好きにして」 と答えたといいます。
そして、6,000万円の新築の注文住宅を購入。頭金は800万円、35年ローン(変動金利)、毎月の返済は約15万円、ボーナス月は20万円を上乗せ返済。さらに固定資産税、火災保険、将来の修繕費……。これらの費用はなんだか現実味のないものだったといいます。
「友人たちだって、別にお金持ちじゃないけれど似たような家を買っていますから。最終的にはなんとかなるだろう、そんな気持ちでした」
引っ越したばかりの頃、Aさんは幸せでいっぱいでした。新築の匂い、白い壁、広いリビング。こだわりのキッチンやお風呂の水回り、子どものたてる音に気を使わなくていい生活――。
ところが、暮らしは静かに現実を見せてきます。位置的に2階のトイレの水音がリビングにまでうっすら響く。朝の光は期待より弱く、キッチンがどこか薄暗い。
それでも、「慣れていけば、こんなことは気にならなくなる」。最初はそう思っていました。ところが……。
