日本で“エンジニアを爆買い”する中国企業…奪われる「優秀な人材」、日本企業が与えられない「活躍の場」

日本で“エンジニアを爆買い”する中国企業…奪われる「優秀な人材」、日本企業が与えられない「活躍の場」
(※写真はイメージです/PIXTA)

「自前主義」が根強く残り、優秀なエンジニアを活かしきれず中国企業に流出を許す――。日本の自動車産業が抱える内部的な課題は深刻だ。一方で、ソフトウェア開発で先行する海外勢の脅威は日増しに高まり、かつての「メイド・イン・ジャパン」の栄光は過去のものとなりつつある。ガソリン車で培った強みをどう活かし、弱点を克服していくのか。湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、日本自動車業界の未来への示唆を探っていく。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

優秀なエンジニアの育成力

近年、製造業の競争力をめぐって、「サイバーフィジカルシステム」が注目されている。多様な生産データをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で分析を行い、そこで創出した情報によって、産業の活性化を図っていくものである。

 

過去の履歴と現在のライン状況をリアルタイムに比較し、最適な稼働率と生産量、製品の品質や設備の故障などのトラブルを予測し、仮想空間内で試作品の作成を可能とする。またこれまで職人技に依存していたノウハウや経験も数値化のうえで分析し、ロボット作業に代行させることも可能となる。そのシステムとの連携により、より高い生産性と品質を実現する【図表】。中国では官民あげてこのような取り組みが急速に展開されている。

 

出所:筆者作成
[図表]サイバーフィジカルシステムのイメージ 出所:筆者作成

 

一方、こうした変革に対応し、現場で必要となるデジタルツールを使いこなすAI・ソフトウエア関連人材の育成が、より一層求められる。残念ながら米中と比べると、日本ではその分野の取り組みは遅れている。通信・情報工学の人材不足だけでなく、機械工学の人材・エンジニア市場でも変化が見られている。

 

日本の製造業では企業を引っ張るカリスマ的な経営者が少なくなっているが、現場を支えてきた優秀なエンジニアはグローバル市場で必要とされている。

 

現在、中国企業が日本に研究開発センターを設立し、日本人エンジニアの採用を強化している。大手自動車・電機メーカーを定年退職した人材だけではなく、現役も狙われている。中国企業に移った日本人エンジニアの大半は、中国企業に活躍の「場」を求めたにすぎず、日本企業が実力のあるエンジニアを活用し切れていない面も否めない。「頭脳流出」との批判があるものの、日本のエンジニアが評価されているということである。

 

一方、「自分で判断できない指示待ち社員が増えている」と前日産社長の内田誠氏が指摘したように、上司の指示だけをこなしてリスクをとらないエンジニアの増加が、日本企業全体の技術力を落としているともいえる。

 

こうした問題発見力を備えないエンジニアは、中国企業でも戦えないだろう。今中国勢は長時間労働を武器に開発期間を短縮しており、これまでの開発の常識を塗り替えようとしている。日本企業の働き方でどう伍していくかは、今後の大きな課題となる。そのまま行くと、「メイド・イン・ジャパン」は技術・品質とも世界一との「誇り」がいつのまにか「驕り」に変わり果て、エンジニアのレベル低下につながっていく。

 

国境を超えて人材は移動し、日本企業も国籍を問わない人材の登用をより活発化させれば、企業の優勝劣敗も瞬時に入れ替わりうる。技術を他社に売っても、追い抜かれないようにその技術を陳腐化させ、さらに一歩先を目指していくのが、真に強い企業である。優秀な人材の獲得や育成において、硬直的・横並びである人事制度の見直しを急ぐ必要がある。

 

特に「減点主義」の人事を徹底的に見直し、柔軟な戦略修正ができる力を保ちながら、果敢にチャレンジしていくこと、これこそが日本企業の強みといってもよい。リスクを積極的にとりにいければ、将来の収穫も大きくなるだろう。

 

【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】

坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション

次ページ日本車は「家電の二の舞」を演じるのか

※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録