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優秀なエンジニアの育成力
近年、製造業の競争力をめぐって、「サイバーフィジカルシステム」が注目されている。多様な生産データをセンサーネットワーク等で収集し、サイバー空間で分析を行い、そこで創出した情報によって、産業の活性化を図っていくものである。
過去の履歴と現在のライン状況をリアルタイムに比較し、最適な稼働率と生産量、製品の品質や設備の故障などのトラブルを予測し、仮想空間内で試作品の作成を可能とする。またこれまで職人技に依存していたノウハウや経験も数値化のうえで分析し、ロボット作業に代行させることも可能となる。そのシステムとの連携により、より高い生産性と品質を実現する【図表】。中国では官民あげてこのような取り組みが急速に展開されている。
一方、こうした変革に対応し、現場で必要となるデジタルツールを使いこなすAI・ソフトウエア関連人材の育成が、より一層求められる。残念ながら米中と比べると、日本ではその分野の取り組みは遅れている。通信・情報工学の人材不足だけでなく、機械工学の人材・エンジニア市場でも変化が見られている。
日本の製造業では企業を引っ張るカリスマ的な経営者が少なくなっているが、現場を支えてきた優秀なエンジニアはグローバル市場で必要とされている。
現在、中国企業が日本に研究開発センターを設立し、日本人エンジニアの採用を強化している。大手自動車・電機メーカーを定年退職した人材だけではなく、現役も狙われている。中国企業に移った日本人エンジニアの大半は、中国企業に活躍の「場」を求めたにすぎず、日本企業が実力のあるエンジニアを活用し切れていない面も否めない。「頭脳流出」との批判があるものの、日本のエンジニアが評価されているということである。
一方、「自分で判断できない指示待ち社員が増えている」と前日産社長の内田誠氏が指摘したように、上司の指示だけをこなしてリスクをとらないエンジニアの増加が、日本企業全体の技術力を落としているともいえる。
こうした問題発見力を備えないエンジニアは、中国企業でも戦えないだろう。今中国勢は長時間労働を武器に開発期間を短縮しており、これまでの開発の常識を塗り替えようとしている。日本企業の働き方でどう伍していくかは、今後の大きな課題となる。そのまま行くと、「メイド・イン・ジャパン」は技術・品質とも世界一との「誇り」がいつのまにか「驕り」に変わり果て、エンジニアのレベル低下につながっていく。
国境を超えて人材は移動し、日本企業も国籍を問わない人材の登用をより活発化させれば、企業の優勝劣敗も瞬時に入れ替わりうる。技術を他社に売っても、追い抜かれないようにその技術を陳腐化させ、さらに一歩先を目指していくのが、真に強い企業である。優秀な人材の獲得や育成において、硬直的・横並びである人事制度の見直しを急ぐ必要がある。
特に「減点主義」の人事を徹底的に見直し、柔軟な戦略修正ができる力を保ちながら、果敢にチャレンジしていくこと、これこそが日本企業の強みといってもよい。リスクを積極的にとりにいければ、将来の収穫も大きくなるだろう。
