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ロボットやAIによる効率アップは「労働生産性」が高まったといえるか?
冒頭の議論である。日本人が一生懸命に働いて生産性を向上させるしかない。プラスアルファはAIの助けだ。足元はフィジカルAIやエッジAIなどAIが社会実装されるフェーズに入ってきている。ソフトバンクグループ(9984)はスイス重電大手ABBからロボット事業を買収する。AIとロボットを融合させるフィジカルAIが本格始動してくる。エヌビディア[NVDA]と安川電機(6506)も同様だ。ロボットや小型端末で動くAIが製造業の現場の効率性をアップさせるだろう。
こうした生産性の向上は、人間の働き方が効率よくなったわけではなく、機械のおかげではないかと思われるだろう。それで「労働生産性」が高まったといえるのか? 賃上げを雇用主から勝ち取れるのか?という疑問があるかもしれない。
筆者は生産性の専門家である。その答えはYESだ。
経済学では、長期的には、実質賃金 ≒ 労働生産性(=労働1単位あたりの付加価値)の水準で決まるとされる。企業が生産した付加価値は、「労働者への賃金」、「資本家への利潤」、「政府への税」として分配される。全体の「分け前の総量」を増やすのは、生産性を高めるしかない、という理屈だ。
ここで資本家がAIなどを導入するとする。AIや新たな機械で生産性が高まる。それはいってみれば資本家がコスト負担して設備投資したからであって、労働者ががんばって働いて生産性が高まったわけではない。しかし、労働生産性の定義は、
なので、労働者の数や労働時間が変わらずにアウトプット(生産量)が増えれば、それは定義からして労働生産性が高まったということになる。このような生産性上昇は、資本深化(capital deepening) による効果と呼ばれる。
たとえ資本(機械)が生産性を高めたとしても、それを使いこなすのは労働者であって、生産は「労働と資本の結合」によって成り立つ。まさに「機械と人間の協働」によって生産性が高まるということだ。
ただ、最終的に賃金が上がるかどうかは労働分配率による。付加価値はいったん資本家(企業)が得るので、それをどう労働者に分配するのかは企業の裁量である。
