物価高対策は賃金を上げるのが基本
高市氏は9日、NHKの「ニュースウォッチ9」やテレビ東京のワールドビジネスサテライト(WBS)などに生出演。NHKは高市さんに望む街の声を伝えた。真っ先に上がったのが「物価高対策」だ。
高市氏は、これまで展開してきたご自身の政策をここでも繰り返した。
①ガソリンと軽油の減税
②地方自治体への交付金の拡充
③経営難に苦しむ病院や介護施設への支援
の3つだ。じゅうぶんである。
それに対して、円安はインフレを助長するという声がある。金融緩和と積極財政を掲げる高市氏が自民党の総裁に就任したことをきっかけに、外国為替市場では円安・ドル高が進行。昨晩9日のNY市場で円相場は一時、1ドル=153円23銭と2月中旬以来、約8ヵ月ぶりの安値を付ける場面があった。
こうなると輸入物価抑制のために日銀が利上げを進めるとの見方も浮上している。しかし、実は足元のインフレというのはほとんどが食料品の上昇によるものだ。むろん、食料自給率の低い日本は、円安によって食料品価格は上昇するという要因もあるが、その経路は複雑で、円安がストレートに足元のインフレの要因とはいいきれない。そして、ここがいちばん重要な点だが、日銀の金融政策だけで、市場の複雑な思惑で決まる為替レートをコントロールすることは不可能である。
足元のインフレに戻れば、日銀自身が、この先いったん伸び悩んだあとに徐々に高まっていくと展望レポートで示している。「物価安定の目標」とおおむね整合的な水準で推移するのは「見通し期間の後半」だとしているのだ。端的にいえば、インフレは日銀のターゲットにもまだ届いていないということだ。
この程度のインフレで本来は「物価高対策」などと騒ぐレベルのものではない(あくまで日本国民全体が騒ぐほどのことはない、という意味で、生活に困窮している人たちには相応の対策が必要であることはいうまでもない)。
高市氏は、足元のインフレは供給要因で押し上げられているものであり、賃金上昇と需要の拡大に牽引される「デマンドプル(需要主導)型のインフレ」に移行するのが望ましいとしている。まったくそのとおりである。
そもそも物価高対策というと、すぐに米の値段を下げろといった、物価を抑制する要求が強まるが、物価を下げるという発想はデフレ時代の旧弊以外のなにものでもない。物価高対策は物価を下げることではない。物価高に負けないように賃金を上げるのが基本だ。高市さんのスタンスは、そこにフォーカスしているのである。
厚生労働省が8日発表した8月の実質賃金は前年同月比で1.4%減少した。これで8ヵ月連続のマイナスである。では、どうしたら実質賃金がプラスになるか。
